圧巻の巨大建築とそこにまつわる七不思議『知恩院』(東山区)

京都府

とにかく大きな三門が目につく浄土宗の巨大寺院。境内に進むとさらに大きな御影堂もあります。伽藍のスケールに目を奪われがちですが「七不思議」をはじめ、細部にも見どころが詰まっています。

時間:5:30~16:00 ※受付は9:00から
拝観料:無料 ※方丈庭園は400円
2020/3/27(金)

東山にある巨大寺院

知恩院があるのは東山エリア。清水寺、八坂神社、高台寺、青蓮院門跡、八坂神社と多数の神社仏閣が集まる観光の中心地。それぞれ歩いて回れる距離感です。

駅から直接向かう場合、3路線の駅が利用可能です。

地下鉄東西線「東山駅」・・・徒歩12分
京阪本線「四条駅」・・・徒歩10分
阪急京都線「四条河原町駅」・・・徒歩15分

圧巻の巨大建築『三門』

知恩院の正式名称は華頂山知恩教院大谷寺。浄土宗の宗祖の法然によって開かれた寺院で、全国各地にある浄土宗のお寺の総本山です。

まず訪れる人を出迎えるのは、超巨大な三門。高さ24m・幅50mと日本の寺院の門の中でも最大級の大きさを誇ります。華頂山と書かれた額も畳2畳分というスケール。

通常お寺の門は山門と書きますが、ここでは漢数字の三という字をあてています。これは「空門」「無想門」「無願門」の3つからなる三解脱門を表しているためだそう。

楼上は十六羅漢像を安置する仏堂となっており、特別公開時には内部拝観することも可能です。

細部まで目が離せない『御影堂』

三門を抜けて進むと、中央に大きくかまえる御影堂(みえいどう)が見えてきます。浄土宗の開祖である法然の御影を祀っています。

三門も巨大でしたが、この御影堂はさらに大きい!知恩院で最大の伽藍で「大殿」とも呼ばれています。

写真では伝わりにくいですが、扉一枚とっても4メートルという巨大さ。閉まっていたため確認できませんでしたが、扉の落とし金にはカッパやセミをモチーフにしたレリーフが隠れているそうです。

ふと屋根を見ると、不要にも思える位置に置かれた4枚の瓦を見つけました。これは「葺き残しの瓦」完成すると衰退の一途を辿ることとなるため、わざと未完成の状態にしているのです。

慎ましやかな『方丈庭園』

御影堂の奥にある集会堂の中を進んでいくと、方丈庭園の拝観受付があります。拝観は15:40までと、閉門時間とは異なっています。かなりぎりぎりの訪問でしたが受付していただけました。拝観料は400円です。

この受付から外へ出ることになるので、集会堂入口で脱いだ靴は手に持っていきましょう!私は、集会堂入口の下駄箱に靴を入れていたため、受付のあと靴を取りに戻りました。

全国各地に作品を残す作庭家・小堀遠州と縁のある僧・玉淵(ぎょくえん)によって造られたという池泉庭園。玉淵についての情報があまり見つからないのですが、玉淵坊のことでしょうか。

意味深に配置された真ん丸の植え込みと大きな石。こちらは「二十五菩薩の庭」といい、石は菩薩を、植え込みは菩薩を包む雲を現しているそう。

順路に沿って進むと、100段ほどの石段へ。きちんと整備されているため歩きやすいですが、高低差があるのでご注意ください。

石段を登った先には山亭があり、その前は展望台となっています。ここからは京都市内をぐるっと見渡せます。

目立つシンボルが無いため少々地味な印象の庭園ですが、細部をじっくり見るにはこういった庭園の方が向いている気がします。

知恩院にまつわる『七不思議』

知恩院には七不思議と呼ばれる、不思議なポイントがあります。せっかくなので、7つめぐってみました。①④⑤⑥は方丈、②は三門、③は御影堂、⑦は門の外にあります。
※③と⑦以外は写真撮影不可です。

①鴬張りの廊下

大方丈から延びる廊下は、歩くとウグイスの鳴き声のような音がします。静かに歩こうとしても音が鳴ってしまうため、忍びの侵入を防ぐセキュリティ効果があったそう。
実際に歩いてみたところ「ホーホケキョ」とはいきませんが「ピヨピヨ」と音が鳴って不思議な感じ。つい何度も往復したくなる感覚です。

②白木の棺

三門楼上に安置された棺、その中身は夫婦の木像があります。この夫婦は、三門造営を引き受けた奉行・五味金右衛門夫婦。立派な三門を造り上げたのですが、予算超過の責任をとり自害。その夫婦を弔うために木造を納めたそう。三門は特別公開時にしか登ることができないため、こちらは確認できませんでした。

③忘れ傘

御影堂の軒の裏には、骨だけとなった傘が置かれています。日光東照宮などでおなじみの伝説の大工・左甚五郎が魔よけのために置いた説、白狐が新しい住処をつくってもらったお礼に置いた説などがあります。

写真では非常にわかりづらいのですが、目を凝らして見ると、確かに傘のようなものが見えます。巨大な御影堂の軒裏は相当な高さなので、誰かがこっそり置いたとは考えにくい。この傘については、後述の濡神大明神とも関わってきます。

④抜け雀

大方丈の菊の間の襖に描かれた狩野信政の絵。スズメが描かれていたのですが、信政の絵が上手すぎたため、襖から飛び出し、羽ばたいて消えてしまったそう。
確かにスズメの絵は描かれていません。何らかの理由で消えてしまったのでしょうか?似たようなエピソードの上方落語「抜け雀」に倣うと、絵の中に止まり木を描けばスズメがまた戻ってくるかもしれません。

⑤三方正面真向の猫

方丈の廊下に描かれている猫の絵。狩野信政による作品で、どの角度から見ても猫に睨まれているように見えるそう。
寄り目がちな猫の眼力が物凄く、見られているような気持ちになります。天龍寺や妙心寺の天井に描かれた雲龍図「八方睨みの龍」と同じ感覚です。

⑥大杓子

大方丈入口の廊下の梁の上に大きな杓子が載せられています。
2.5mもある大きな杓子は存在自体が謎です。一体何に使ったのでしょうか・・・?
一説では、大坂夏の陣の際に三好清海入道(真田十勇士の一人)がこれを手に持ち暴れまわった、または兵にご飯をすくって振舞ったといわれています。やがて、「すくう=救う」ということで、ここ知恩院に安置されるようになったとか。

⑦瓜生石

三門の外側、黒門の近くに埋まっている石。知恩院が建立される前からここにあるといわれているこの石には様々な言い伝えが残されています。

・誰も植えていないのに瓜が生えてきた、
・八坂神社の祭神である牛頭天王が降臨した
・石を掘ると二条城までつづく道がある
・隕石が落ちた場所

3km以上離れた二条城まで都を突っ切る地下道が続いているというのはロマンあります。なお、二条城という建築は、歴史上にいくつか存在しているため、現在中京区にある二条城ではない可能性もあります。

濡れ髪と傘のお話

方丈庭園を順路に沿って進んでいくと、境内の奥にある濡髪大明神にたどりつきます。この社は、御影堂を建設したことにより住処を追われたキツネが霊巌上人に頼み、代わりに用意してもらったという神社です。


キツネが子供に化けたとき、神が濡れていたため、濡髪という名を冠しています。

さきほどの七不思議「忘れ傘」の言い伝えに、「白狐が新しい住処を作ってもらったお礼に」とありましたが、もしかしてこの濡髪大明神のことでしょうか。

骨だけの傘だったため「濡れ髪」でいたのでは・・・そう思って調べてみると、どうやら少し違う様子。

キツネが子供の姿に化けて住処を頼みにきた際、神が濡れているのを気にかけた霊巌上人が傘をプレゼントしたそう。その後、キツネはお礼にその傘へ神通力を込めてお返ししたという話があるそうです。

あれ、七不思議の1つ、解決したのではないでしょうか?


時刻は16:30、寺院や観光スポットはそろそろおしまいの時間ですが、まだ行きたいところは残ってます。予約していたパペポミュージアムへと向かいます!

コメント

  1. […] 長さ4mにも及ぶ巨大なすりこぎ棒。こんな大きな道具、いったい何に使うのでしょうか?知恩院の大杓子のような怪力僧の伝説が残っているでは・・・そう思ったのですが、地ならしに使用した棒を棄てるのが惜しく、すりこぎ棒に加工したとの逸話があるそう。なお、この棒を撫でると女性は料理が上手くなり、男性はゴマすりが上手くなって出世するそうです。男女の差が著しいです。 […]

  2. […] こちらは天水桶(てんすいおけ)。いったい何のために屋根に桶があるの?風水的な意味合い、もしくは知恩院の大杓子や法隆寺五重塔の鎌のように七不思議だったりするのでしょうか。 […]

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