京の東を守る龍と神様のオンパレード『八坂神社』(東山区)

京都府

全国に約2,300社あるという八坂神社の総本社で、祇園祭でも知られる京都を代表する神社。都の東を守護する「青龍」を司っており、龍や水と深い関りがあります。たくさん並んだ境内社は多種多様な神様が祀られており、見応え抜群。

2020/3/27(金)

参拝しやすい神社

八坂神社は、京阪本線の祇園四条駅から徒歩5分、もしくは阪急京都線の京都河原町駅から徒歩8分ほどのところにあります。

清水寺や知恩院、円山公園などの観光スポットがひしめく東山エリアにあるため、非常に立ち寄りやすい神社です。また、楼門が閉じることは無く、24時間参拝することができます。早朝や夕方に訪問すれば混雑を回避できそうです。

2つの大きな楼門

八坂神社といえば、四条通から見える大きく立派な楼門。参拝していなくても、この門を見たことがある方は多いのではないでしょうか。こちらが正門かと思いきや、実は西門

下河原通りに面した石鳥居をくぐった先にある南楼門が正門にあたります。

なお、西門には「蜘蛛が巣をはらない」などの七不思議もあるそうです。

平安京以前から続く深い歴史

南楼門を抜けると舞殿があり、その奥にすぐ本殿が見えてきます。この3つの建築は、屋根の高さが同じになるよう計算されています。そのため南楼門は少し高い位置に建っており、門をくぐると階段を下るという、ちょっと不思議な行程になっています。

通常の神社は、本殿の手前に拝殿が設けられており、参拝者はその拝殿に向かってお参りします。しかし、八坂神社に拝殿は無く、本殿に直接参拝するカタチとなります。正確には、本殿と拝殿を1つの屋根で覆った「祇園造」というレアな建築様式。

そんな八坂神社の創建は656年と、1400年近い歴史を持つ神社。「京(みやこ)」が奈良から京都へ移った平安京遷都(794年)よりも以前からこの地にあったということになります。

現在の御祭神は素戔嗚尊(スサノオノミコト)&櫛名田比売命(クシイナダヒメノミコト)の夫婦の神様と、その8人の子供である八柱御子神(ヤハシラノミコガミ)。明治以前の神仏習合の時代には、スサノオの本地とされる牛頭天王(ゴズテンノウ)を祭っていました。

京の東を守護する龍

「四神」をご存知でしょうか。東西南北を司る4体の霊獣のことで、北の玄武、南の朱雀、西の白虎、東の青龍のことを指します。

平安京にはその思想が根付いており、現在の平安神宮を中心に東西南北の神社にそれぞれ四神が祀られました。

・東(青龍) 八坂神社
・西(白狐) 松尾大社
・南(朱雀) 城南宮
・北(玄武) 上賀茂大社

平安京の東に位置するこの八坂神社が司るのは青龍。
そんな八坂神社の本殿の地下には龍が住んでいるという伝説があるそう。「大きな池がありそこに龍が住んでいる」「地下に井戸があり竜宮に続いている」「龍脈が神泉苑や東寺まで続いている」など、様々な言い伝えが残されています。

本殿の柱には「龍吼(りゅうぼえ)」という龍の彫刻があります。その下で手を鳴らすと、音が反響する「鳴き龍」効果があるらしい。

試しにやってみたのですが、全く反応がありません。社務所の巫女さんに尋ねてみたのですが「それは違う神社だと思います」とのこと。Web上には実際に反響したとの報告がいくつか挙がっていますが、人を選ぶのでしょうか。

境内社めぐり

八坂神社の境内には多数の摂社・末社が並んでいます。それぞれ立派で特徴的なお社が建てられているので、非常に見応えがあります。

大神宮社

内宮と外宮、2つの社が並んでおり、八坂神社の御祭神スサノオの姉神で伊勢神宮の神様である天照大御神と豊受大御神をそれぞれ祀っています。この社は、伊勢神宮の廃材を利用しているそう。

その2社の間にあるのが二見岩。伊勢にある二見岩に比べるとかなり小ぶりに見えますが、それは地上に出ている部分の話。地面の下では大きく広がっており、地軸にまで達しているとの話も。地軸というと地下6,000kmほどの距離があります。もはや岩のレベルを超えているのでは。

美御前(うつくしごぜん)社

宗像三女神である多岐理毘売(タギリビメ)・多岐津比売(タギツヒメ)・市杵島比売(イチキシマヒメ)を祀る末社で、名前の通り美容のご利益があります。玉垣には「資生堂」「〇〇美容専門学校」「ヘア〇〇」や「ビューティー〇〇」といった美容関係業者が名を連ねています。

疫(えき)神社

蘇民将来(ソミンショウライ)を祭る神社。蘇民将来は、旅をしていたスサノオ(※諸説あり)をもてなしたことで、疫病を免れることができる茅の輪(ちのわ)を授かります。

神社の近くには茅の輪くぐりが設置されています。毎年夏に開催される夏越祭のときに設置されるのですが、このご時世に則り急遽用意されたそう。「蘇民将来子孫也」と唱えながら3回くぐると、厄災をよけることができるといいます。パンデミックな今こそ力を発揮してほしいです。

蛭子社

蛭子(えびす)様を祀っており、「祇園のえべっさん」とも呼ばれています。この社は北を向いているため、北向蛭子社という別名も。

ご利益はもちろん商売繁盛。えびす様といえば、大阪の今宮戎神社が有名ですが、この八坂神社の氏子が大阪に引っ越した際に、えびす様を祭ったのがはじまりという説もあります。その流れから、八坂神社と今宮戎神社は今でも交流が続いているそうです。

大国主社

縁結びの神様といわれる出雲大社の主祭神・大国主命(オオクニヌシノミコト)を祀っており、「大国さん」とも呼ばれています。

社の前には大国主命と白うさぎの像。八十神たちに騙されて苦しんでいたウサギを助ける、「因幡(イナバ)の白兎」のワンシーンでしょうか。

悪王子社

悪王子という何とも魅力的な名前がきになりますが、「悪」は「強い」という意味で、決してダークプリンスではありません。ここはスサノオの荒魂(あらみたま)を祀る神社。神様の霊魂には荒魂と和魂の2つの面があり、荒魂は力強く勇猛さを、和魂は優しく平和的な面を司ります。

刃物社

刃物発祥の地ともいわれる京都、鍛冶屋さんがお参りする神社もあります。ものを切る刃物のイメージから「苦難を断ち切り、未来を切り開く」効果もあるといいます。さらに、悪縁もよく切れるようになるといったご利益もあるそう。

豊かな湧き水流れる境内

美御前社の前に沸いているのは「美容水」。手に取り肌に数滴つけることで、美肌のご利益があるそうです。繁忙期には、この美容水を求める人で行列ができることもあるらしい。

大神宮社のすぐそばには不思議な「力水」。龍神の力が宿るといわれており、京の名水にも数えられています。飲用するには煮沸が必要とのことです。

社務所の隣に設置された自販機にはペットボトルに入った「祇園水」が並びます。もしかして製品化された力水かと思ったのですが、中身は海洋深層水。神社の湧き水ではなさそうですが、生命起源とされる海の力が秘められています。

八坂神社といえば祇園祭

八坂神社といえば、毎年夏に開催される祇園祭は全国的な知名度を得ています。平安神宮の「時代祭」、上賀茂神社・下鴨神社の「葵祭」と合わせて京都三大祭の一つに数えられています。また、大阪の「天神祭」、東京の「神田祭」と合わせて日本三大祭、岐阜県の「高山祭」・埼玉県の「秩父夜祭」と合わせて三大曳山祭と、三大シリーズ常連でもあります。

祇園祭は、7月1日にはじまり、一ヶ月続くとても長いお祭り。多くの祭行事が執り行われますが、その中でも巨大な山鉾が街中を練り歩く『京都祇園祭の山鉾行事』は特に有名で、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。

祇園祭はもともと疫病を納めるために開催されました。平安京にて流行した病を怨霊の祟りと考え、それを鎮めるために牛頭天王をり、鎮魂の儀式である「御霊会(ごりょうえ)」を行ったのがはじまりといわれています。

2020年は新型コロナウイルス感染拡大を受けて山鉾巡行や神輿渡御が中止に。伝統ある儀式を中止することは、苦渋の決断であったこと想像に難くありません。この決断が事態を良い方向に導くことを願っています。


京都に来るたびに気になっていた八坂神社に、ついに参拝できました!広い境内をまわりながら様々な境内社を見ていると、ちょっとした旅を終えたような気持ちになりました。このあとは歩いて知恩院へと向かいます。

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