まちなかアートミュージアム『アーツ前橋』(前橋市)

群馬県

前橋駅から少し離れたところに立つ、ふらっと立ち寄りやすい雰囲気の美術館。訪問した際は荒井良二の展覧会を開催中。カラフルで親しみやすい作品がずらりと並び、不思議な世界に迷い込んだような気持ちになれる展示が広がっていました。

訪問日:2024/7/15(月) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

街に溶け込むアートスペース

アーツ前橋は、前橋プラザげんき21別館に入る美術館。もともとは西友LIVIN前橋店WALK館の建物を利用して2013年にオープンしました。

真っ白な洗練された外観であり、道路に面した大きなガラス窓からは、開けた印象が伝わります。建築を担当したのは、神戸生まれの建築家、水谷俊博。

シンボルマークは前橋の「前」と「M」がデザインされています。こちらはデザイナーの西澤明洋によるもの。

「創造的であること」「みんなで共有すること」「対話的であること」の3つを活動のコンセプトに、地域ゆかりの作家の作品を展示したり、企画展やワークショップが開催されています。

ギャラリーの作品たち

建物の1階と地下1階が美術館スペース。訪問した際は1階のギャラリーは無料開放されていました。

そこに展示されているのは、文字が書かれた木の板。2024年6月22日に開催されたこどもワークショップ「こどものための絵と言葉の一日」にて、子どもたちが描い作品たち。

テーマは「うつくしきってなに?」。一つずつ見ていくと、「夕日がのぼったとき」「世界中の全ての色と絵」といった素敵な内容から、「何もない場所」「絵の具のついた手をながめるとき」「ぎっしりと並んだ回路」のような、なかなかユニークな切り口のものまで。

個人的にすごいと思ったのは「かがみで自分を見たとき」という記載。ちょっとした笑いを取りに行ったのか、それとも深い意味が込められているのか。これを書いた子は、とにかく只者ではないと思います。

企画展は荒井良二

そのまま地下1階の企画展示室へ。1階ギャラリーから地下へと進む階段がすごく良い!

真っ白な空間を間接照明が彩る。よく見ると、バラが描かれたタペストリーや可愛らしい人形などのアート作品が数点展示されています。

さて、ただいまの期間はコチラ。

new born 荒井良二  いつも しらないところへ たびするきぶんだった
会期:2024年6月29日(土)~8月25日(日)

山形県生まれのアーティスト、荒井良二の作品を集めた企画展。自らを「絵本もつくる人」と称する彼の作品は、絵本の世界が飛び出したような人懐こいものばかり。子供は無邪気に楽しむことができ、大人も童心に帰るような不思議な気持ちになれます。

ポップでかわいらしい作品

木の上に腰掛けるのは《げんしくん》。親しみやすいデザインでとってもかわいらしい姿です。

色鮮やかな《たいようをすいこむ門》。大分県に設置されたオブジェの模型バージョンです。

うっすらと見覚えがあるなと思い、4月に行った大分の写真を振り返ると、無意識に写真に撮っていました!自分の旅がリンクする瞬間って、とっても嬉しいですね。

基本的に作品名や解説などはほとんど無いため、自由に捉えることができます。絵画だけでなく、立体的なインスタレーション作品も多数、音楽や朗読も流れており、彼の作り出す世界にどっぷりと浸ることができます。

山形じゃあにぃとビエンナーレ

「山形じゃぁにぃ」というのは、荒井良二の郷土である山形にて開催された個展。その際に展示された作品も多く並んでいました。

こちらの顔が描かれたボーリングのピンも山形じゃあにぃで展示されたもの。小学校の旧校舎にて、竹で編んだ大きなボールを使ったボーリングを開催。誰ひとりピンを倒せなかったそうです。

こちらは《クマのクーちゃん》。同じく山形じゃあにぃの展示物です。小学校の旧校舎に地下通路があり、そこを懐中電灯で照らしながら、このクーちゃんが進むという作品であったそう。進んだ先には本物の熊の剥製「マーくん」が・・・。

そんな山形じゃぁにぃが開催されたのは、山形市立第一小学校の旧校舎を利用した「山形まなび館」。現在は「やまがたクリエイティブシティセンター Q1」という名前に変わっています。今年の5月に訪問してきたばかりなので、「山形」&「旧校舎」という2つのワードでもしや、と思っていました!ここでも旅がリンクして楽しいです。

旧校舎に広がる『やまがたクリエイティブシティセンター Q1』(山形市)
歴史あるコンクリート建築の校舎を活用したクリエイティブなスポット。「Q1(キューイチ)」とも呼ばれるこの施設、中にはいったい何があるのでしょうか?

こちらは、山形ビエンナーレ2018で作られた《山のヨーナ》。同名の絵本に登場するヨーナの店を立体化したもので、主人公ヨーナに扮したスタッフがお店に立ち、劇中さながらに訪れる人の話を聴いていたそうです。

「いらなくなったもの」を持ってくると、「お守りのようなもの」に交換してくれるというアクションも。そこで預かった「いらなくなったもの」たちは、こけしライトにかけられています。ストラップやぬいぐるみ、ペンなどいろいろなモノがかかっていました。

ポップで鮮やかな作品が続く中、目を引くのは壁に貼られているモノトーンの人物画。こちらは名画の模写であるそう。ラフ画とはいえ、丁寧に描かれる線からは、画力の高さがひしひしと伝わってきます。

この模写、「一日中自分のことを考えているので、模写をしたら他者のまなざしに近づけるのでは?」という考えのもと、毎晩寝る前に行っているそう。

展覧会に隠れた静のアリア

そんな展覧会の会場内に設置された扉。ほとんど主張が無いため多くの人が素通りしてしまうドアの向こうには、《静のアリア》by 照屋勇賢という作品が展示されています。

薄暗い階段のような空間。一部には冊子が置かれています。

ここは、元々非常階段であった場所。2011年3月の東日本大震災発生時に前橋で製作を行っていた際に生まれた作品であるそう。災害時にしか目にしない非常階段を見ながら、社会の中で芸術の果たす役割を想像する場所とのことです。基本的には自由にくつろいで良いそうなので、展覧会の合間のちょっとした小休止におすすめです。

14:00と16:00には、群馬交響楽団が2011年3月27日に行ったチャリティコンサートが再生されるという演出もあるそう。

ただし、前述の通り少々見つけにくい場所にあるのでご注意を!

屋上にも設置されたアート

さて、館内もひとまわりしたので退館しようと思ったその先、目に入ったのは「屋上にも作品がある」という小さな展示。

ということでエレベーターで屋上へ進んでみるも、それらしきものは見つかりません。

あれ、もしかしてこの空の写真が貼られたキューブが作品でしょうか?

こちらは《空のプロジェクト:遠い空、近い空》。ミラノ在住のアーティスト廣瀬智央と前橋市内の母子生活支援施設の子どもたちの間で行われた、空の写真を交換する「空の交換日記」。その写真がリアルな空をバックに浮かび上がります。

この空のプロジェクト、そして、先ほどの静のアリアは、アーツ前橋がアーティストに依頼して作成されたコミッションワーク。私が今回みつけたのはこの2点だけですが、実は他にも作品は隠れています。もしアーツ前橋に訪問される際は、そんな作品たちを探してみてくださいね。

アクセスと営業情報

JR前橋駅の北口から徒歩10分、上毛電気鉄道の中央前橋駅から徒歩5分ほど。

駐車場は提携のコインパーキングが5つあります。同じ建物の4階以上に続く立体駐車場「前橋市民交流プラザ等駐車場」を利用したところ、4時まで無料でした!

開館時間 10:00~18:00
休館日 水曜
公式サイト https://www.artsmaebashi.jp/

※掲載の情報は2024年7月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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