禅宗について学べる大学ミュージアム『駒澤大学禅文化歴史博物館』(世田谷区・駒沢)

東京都(23区)

世田谷区駒澤大学のキャンパス内にある、「禅」をテーマにした博物館。禅の歴史や文化の紹介に加えて、実際に坐禅を組んだり、鳴らし物と呼ばれる楽器で音を出したりと体験メニューも充実しています。

訪問日:2022/12/20(火) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

大学の中にあるミュージアム

箱根駅伝をはじめとしたスポーツ強豪校として全国的に知名度の高い駒澤大学。もともと曹洞宗の学林(学問所)をルーツとしており、かつては「曹洞宗大学」という名の大学でした。

現在も歴史学専攻や仏教学部が有名な仏教系の大学として知られており、世田谷区駒沢に広がるキャンパス内にには禅文化歴史博物館というミュージアムが設置されております。こちらは一般にも開放されているため、学生でなくても自由に見学することができます。

ミュージアムの外観は、見る角度によって印象が変わります。この博物館は、もともと耕雲館という図書館であった建物を改修して利用しています。関東大震災の復興建築として建てられ、現在は東京都選定歴史的建造物に選定されている建築物です。

開放感あふれる展示室

入口を進むと、広いホール型の展示室。真っ白な壁と天井に嵌められたステンドグラスのコントラストがあざやかで、とっても清々しい空間です。

読み物系の展示が充実しており、「禅の源流」、「曹洞宗の成立と展開」、「禅の歴史と文化」、「禅僧列伝」などがパネルでわかりやすく紹介されています。

畳敷きのスペースでは、自由に坐禅を体験することもできます。坐禅用のクッションと座り方のお手本写真もあるので、気軽にトライしてみましょう。

一仏両祖とは

館内に置かれた須弥壇には金色の仏様とその左右に二人の人物像が並びます。

中央に鎮座するのは曹洞宗の本尊である「釈迦牟尼仏」。右の人物像は、日本に曹洞宗を伝えた曹僧である「道元」。大本山である永平寺を開き、曹洞宗では高祖(こうそ)と呼ばれています。左の人物像は、道元に続く4代目となる「瑩山」。曹洞宗としての発展の基礎を築いたため太祖(たいそ)と呼ばれており、永平寺と並ぶ大本山である總持寺を開山しました。

この釈迦牟尼仏、道元、瑩山を一仏両祖と呼びます。さらにこの一仏両祖の前には香炉一・燭台二・花瓶二の「五具足」を配置するそう。

須弥壇の前に置かれた開運おみくじは、なんと無料!気軽に運試しが楽しめます。

厳しい禅宗の修行

「雲水」と呼ばれる禅宗の修行者は、厳しい修行を積んでいきます。そんな禅の修行についての展示も面白い。

夏は3:30、冬は4:30という早朝、振司と呼ばれる僧が力いっぱい鈴を鳴らして起床を告げます。目を覚ました雲水たちは、身支度を整えたらすぐに坐禅を開始。朝の他には10:00、16:00、20:00と1日4回行われます。声をそろえてお経を読む諷経(ふぎん)も1日3回。

そして日中は清掃や畑仕事など、作務(さむ)と呼ばれる作業労役。さらに食事も行鉢(ぎょうはつ)と呼ばれ、無言・無音などの作法が決まっています。禅宗においては日常生活すべてが修行なのです。

こちらは「小食(しょうじき)」と呼ばれる修行僧の朝食。お粥、漬物、ごま塩というものすごくシンプルなメニュー。

「中食」(昼食)と「薬石」(夕食)はお粥からごはんに変わり、おかずが付くそう。そのおかずというのも、肉や魚ではなく野菜のおかずが基本。現代人の食生活とは遠く、非常に質素な食事なのです。

楽しい鳴らしものコーナー

並べられているのは「鳴らしもの」。禅寺に置かれた楽器のことで、ここでは自由に触って音を出すことができます。一度は叩いてみたい木魚は、静かな館内にぽくぽくとした音が鳴り響きます。

こちらは鼓(く)。葬儀、施食会などの法要で使用する太鼓です。中心をバチで叩くそうですが、こちらを睨む龍が描かれており、少し気が引けてしまいます。

鐃鈸(にょうはつ)という難しい漢字のこちらの鳴らしものは、金属の円盤でできたシンバルタイプの楽器。すり合わせて音を出すそうですが、うっかりバシャーンと叩いてしまうと、とんでもない音がします。

壁にかけられているこちらは雲板。食事、坐禅などの際の合図として鳴らすものです。禅宗寺院で見かけたことがある方もいるのでは。

行ってみた感想と見学所要時間

訪れる人もそれほど多くはないようでとても静かな館内。じっくりと禅について学ぶにはぴったりな場所。展示はわかりやすく書かれていますが、テーマがテーマなので多少の知識があった方がより楽しめます。既に何ヶ所か禅宗寺院をめぐったあとに訪問するくらいがちょうど良さそうです。

館内は一部を除いて撮影OK!さらに記念品のクリアファイルも一人一枚もらえます。受付のそばには、仏像コレクションのガチャもあったりしてカジュアルな雰囲気も。

展示ボリュームはそれほど多くはないのでさらっと見たら15分、じっくり見ても30分あれば充分かなと思います。

駅からも近く、非常にアクセスしやすい大学博物館。なのですが、開館日が基本的に平日のみ。一部の人を除いて急激に訪問難易度が上がりますが、こればっかりは大学博物館あるあるなので仕方ないかもしれません。

アクセスと開館情報

東急田園都市線の駒澤大学駅から徒歩10分。

駅から近い北門は午後になると出口専用となり、少し離れた正門から入ることになります。そして、外部の人が学内に入るには受付で名前と目的を記して入構許可書をもらう必要があります!

開館時間 10:00~16:30
休館日 土日祝
料金 無料
公式サイト https://www.komazawa-u.ac.jp/facilities/museum/

※掲載の情報は2022年12月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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