瀬戸内海に浮かぶ牛島は、とても小さな有人離島。観光名所などもなく、ゆったりした時間が流れる島です。そこで過ごす2時間、いったい何をしよう?長いようであっという間の島旅へ・・・。
目的の無い島旅
牛島は瀬戸内海に浮かぶ島。本島、志々島、佐柳島などの島とともに塩飽(しわく)諸島に属しています。面積は0.84㎢と、とてもコンパクトな島です。
今回の旅は豊島、直島、男木島、本島と瀬戸内海の島々をまわってきました。最後に訪れる島は牛島。さきほど行った本島の手前に浮かぶ小さな島です。
当初、牛島へ行く予定はありませんでした。その理由は「何もなさそう」だから。
これまでたくさんの島に行ってきましたが、どの島も見たいものがありました。縄文杉を見たかったり、最南端の星空を見たかったり、二重カルデラとそこに暮らす人々に会ってみたかったり、離島のきれいなサンゴ礁で泳ぎたかったりと、様々な目的がありました。しかし、牛島にはそういった私を惹き付けるモノが見当たらなかったのです。今回は本島だけ行ければ良いかな。そう思っていました。
しかし、宿泊したゲストハウス「ウェルかめ」のマスターがおすすめしていたのが心に響き、行ってみることにしました。

人生初、目的の無い島旅のはじまりです。初体験にわくわくしてきました!
牛島へのアクセス
香川県丸亀市の丸亀港が船の発着所。本島行きの船に乗り、途中で降りる形になります。
本島行きの船は1日8本出ているのですが、牛島へ立ち寄るのはたった1本!また、牛島から丸亀へ向かう帰りの船もたった2本!
昨晩ウェルかめのマスターに協力してもらいいろいろなパターンで計画を立てました。「最初本島へ向かい、帰りに牛島に立ち寄る」というパターンや、「最初本島へ行き、一旦丸亀に戻り、それからまた牛島へ向かう」というパターンなどなど。
一航海で両島めぐるのは島の滞在時間が極端に結局2つの島をそれぞれ別で行くことにしました。本島のあとは一旦丸亀に戻り、ゴールドタワーなどの観光を済ませてからまた丸亀港へ戻り牛島へ向かうというパターン。
本島へ行かず牛島だけを日帰りするにはこれが一番良さげ・・・というか、ほぼこのパターン一択。料金は片道490円、所要時間は約15分とお手軽な航海です。
丸亀港から高速船に乗船
今回は小型の高速船!びゅーんと一気に牛島へと向かいます。
80年代ニューウェーブのようなビートとシンセの音楽が流れると「間もなく到着」のアナウンス。牛島に到着しました。
船は頭から桟橋に着岸、先端から岸壁へと降ります。
港はびっくりするほど何もありません。乗船受付も待合室も自販機もないのです。
本当に何もない。メジャーな観光地をまわるのもB級スポットを開拓するのも、あらかじめ決められた場所をまわる、言うなれば支配された旅。ここにはそれがありません。なんだか試されているような気持ちです。
集会所のモノクロ写真展
港から進み、最初に目に入ったのは集会所。人の気配は全くないのですが、ドアが開いており入っても良さそうな雰囲気。
飾られていたのは「牛島の昭和」。多数のモノクロの写真には、数十年前の島の風景が映し出されています。
ノスタルジックな黒電話も置かれていました。使い方がわかりませんが、つながるのでしょうか・・・?
この集会所にはきれいな洋式トイレがあります。もし牛島散策中にトイレに行きたくなったら、ここへ来れば良いですね。
誰もいない集落
集会所から少し進むと、集落が見えてきました。牛島の集落は港から離れたところにあるのです。
「ISLAND GIRL」と書かれた家。何かのお店なのでしょうか。調べてみたところ、どうやら一軒家貸切タイプの宿のようです。
ここで気が付いたのですが、上陸してからまだ人に出会っていません。
島民が全員消滅してしまうようなとんでも怪事件も今なら信じられそう。
集落を抜けると、港と反対側の海へ。きれいに整備されていますが、やっぱり人の気配はありません。
海辺の道を進む
誰もいない、何もない海辺。せわしなく車が行き交う瀬戸大橋が別の世界のようです。
砂利の浜辺には、流れついた下駄がいました。もしかして、さぬき市志度地区の名産「志度桐下駄」では。
しばらく海沿いを歩いていると、ふと疑問が。このまま反時計回りに海岸線を進んだところで、果たして港まで戻れるのでしょうか?
ここから引き返したら、帰りの船の時間に間に合わない可能性があります。来た道を戻る気力もないので、このまま海沿いを進んでみることにします。
岩場を越えて港を目指す
岩場に密集したカメノテは、こちらを威嚇しているかのよう。転んだらただでは済まないでしょう。
途中、何度も進行があやうい箇所がありました。
陸路が途切れて谷間になっているところは飛び越えて進みます。服装は普段着なので全然動きやすくないのですが、靴だけはトレッキングシューズ。靴は大事です。
どんどん狭くなる陸路と反比例して膨らんで行く不安。岩場にしがみついて進んだりと気合いで乗り切りました。四国に来るとなぜか無謀な冒険心が芽生える気がします。
良かった、港が見えてきました。
さようなら牛島
きれいな海に癒されながら、桟橋で船を待ちます。
本島を出航した船に無事乗船。丸亀へと帰ります。
何もない、何も起こらない島旅でしたが、自分と向き合うことができる貴重な時間をくれました。
ぼーっと過ごしても良かったのですが、結局アクティブに動きまわってしまい、ちょっとした冒険を終えたような気分です。
何もない島は、人によって全く捉え方が変わりそう。
私にとって牛島は冒険の島でした。
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