足利尊氏と後醍醐天皇に関わりの深い嵯峨野嵐山を代表する大きな寺院。3月のサクラをはじめ、数多くの花が咲き乱れる花の寺でもあります。天井を覆い尽くす巨大な雲龍図は必見です。
料金:庭園500円、諸堂300円、雲龍図500円
京都3日間の旅、今日は嵯峨野嵐山をめぐります!
電車でのアクセス
京福電鉄嵐山線の嵐山駅から徒歩1分、JR嵯峨野線の嵯峨嵐山駅から徒歩13分、阪急電車の嵐山駅から徒歩15分ほど。
嵐山の中心地にあり、名所である渡月橋や、撮影スポットとして人気の竹林の小径のちょうど間くらいのイメージ。嵐山に来たなら非常に訪問しやすいところにあります。
天龍寺が造られた理由
お寺が造られるのには理由があります。その土地を守る鎮守であったり、故人を弔うためであったり、その目的は様々。
この天龍寺は後醍醐天皇の慰霊のために建立されました。ここまでは、比較的ポピュラーな目的です。
ここで、少し際立っているのが、このお寺を開いたのが足利尊氏ということ。尊氏と後醍醐天皇は天皇家を二分し南北朝に分かれて争った、いわば敵同士の間柄。
なぜ尊氏が敵対していた後醍醐天皇のために寺院を造営したのか。
「戦ってはいたが後醍醐天皇を尊敬していたため」ととらえる説や、「後醍醐天皇の怨霊に悩まされていたためこれを解消しようとした」といった説などいくつかの説があげられています。建立にあたり、夢想疎石(むそうそせき)という禅僧の勧めもあったとのことなので、何となく後者寄りな気がします。
このとき、天龍寺造営の費用を捻出するため、元寇や倭寇事件により途絶えていた元と国交を戻し貿易により利益を生み出しました。その貿易にあたる室町幕府公認の貿易船を「天龍寺船」と呼びました。
どのコースで見学する?
お寺の台所である庫裏(くり)。台所と寺務所の役割がある伽藍です。流れるような切妻屋根と、真っ白な壁を縦横に走る木の梁がおしゃれ。
入口から中を覗くと、大きな達磨図が描かれています。
庫裏の内部を見学しようかと思ったのですが、【諸堂+庭園】と【庭園のみ】で拝観料が異なります。諸堂+庭園を選ぶ予定でしたが、バスの時間が30分後。この時間は両方見るのに十分でしょうか。
見学所要時間について案内の人に尋てみました。多数の参拝客のお相手をされているというのに「この後はどこへ行く予定?」など、凄く親身になって相談に乗ってくれました。
結果、急ぎ足で両方見るより、「今の季節は庭園を楽しんだ方が良い」とのアドバイス。これが大当たりでした!
世界遺産の庭園
拝観料500円を払い、庭園へ。曹源池(そうげんち)という名の池を中心に造られた池泉回遊式庭園で、嵐山や亀山を借景として取り込んでいます。
天龍寺は世界文化遺産「古都京都の文化財」の構成資産。神社やお寺など17件から成るこの世界遺産ですが、その構成資産は「国宝建造物があるか」「庭園が特別名勝に指定されているか」のいずれかに当てはまります。天龍寺は、この庭園が特別名勝に指定されています。
尊氏に進言したとされる夢窓疎石は作庭家としても知られており、この天龍寺の庭園も手掛けたといわれています。夢窓疎石は、他にも苔寺として有名な西芳寺や、鎌倉の瑞泉寺など多くの庭園を手掛けています。日本各地のお寺をめぐっていると、その名を耳にすることはとても多い人物です。
3月はサクラの名所
東寺や二条城など、桜の名所の多い京都。この天龍寺でも多くのサクラが花を付けています。
多宝殿の前のシダレザクラ。青空をバックにぶわぁっと枝を広げる姿は圧巻の一言。
庭園を登っていくと望京の丘と呼ばれる展望スポットがあります。ここにも一本のシダレザクラが誇らしげに咲いていました。山々を背景に高くそびえる姿は、とても力強い。
嵐山の花寺
サクラの名所は京都市内にたくさんありますが、この天龍寺はサクラ以外にも多くの花を見ることができます。
ピンクの大きな花を咲かせるシャクナゲ。低木ですが、派手な花なのでとても目立ちます。
薄紫とも濃ピンクとも呼べそうな色合いのハヤトミツバツツジ。ハヤト=薩摩隼人のことで、鹿児島県の固有種とのこと。
赤黒いコッコウボケ(黒光木瓜)からは、他の花に比べて大人っぽい気品を感じます。
オレンジと白の花はミツマタ。樹皮が紙幣の原料ともなっている植物です。ミツマタの花って黄色いイメージですが、園芸種ではこのような色を付けるタイプもあり、アカバナミツマタとも呼ばれているそうです。
花の寺特集などで名前が挙がっていることは見たことがないのですが、これだけのラインナップが揃っていれば「花の寺」と呼んでも差し支えないのではないでしょうか。今回は3月の訪問でしたが、きっと四季折々の花が咲くに違いないはず。
雲龍図はいつ見れる?
天龍寺に来たら絶対見逃せないのが法堂(はっとう)の雲龍図。とはいえ、常時公開されているわけではないので事前に確認が必要です。
基本的に雲龍図は土日祝のみ公開。ただし、春夏秋の特別参拝期間は毎日公開されています。2020年は以下の通り。
春の特別参拝(毎日公開)
期間:2020年3月1日(日) ~ 5月31日(日)
夏の特別参拝(毎日公開)
期間:2020年8月8日(土) ~ 16日(日)
秋の特別参拝(毎日公開)
期間:2020年9月12日(土) ~ 12月6日(日)と[嵐山花灯路]期間
あれ、特別参拝期間を合わせると6ヶ月くらいになります。つまり、年間の半分以上は毎日公開されている期間になり、それ以外は土日祝公開。意外と見学しやすかったです。
迫力満点の雲龍図
法堂内部に入ると、すぐに目に入る天井に描かれた大きな龍の絵。青みがかった色合いが幽玄です。
この龍は、開祖である夢窓疎石650年遠忌に向けて1997年に描かれたもの。思ったよりも最近の作品です。どの角度から見ても龍は睨んでくるように見えるため、「八方睨み」と呼ばれています。
この法堂には、開基である足利尊氏と開山である夢窓疎石の像も安置されております。そのうち足利尊氏像も、まるで龍のようにどこからでも目が合うような眼力を感じました。
レアな5爪の龍
ここで、もう1つ気になるのが龍の爪(指)。その数には意味があるのをご存知でしょうか。
中国では5爪の龍は皇帝専用。それ以外の人が使用した場合は罰がくだされるほどでした。4爪は貴族や地方の王、3爪は役人や庶民と、身分の違いで使用できる爪の数が異なっていました。
一方、日本で見ることのできる龍の多くは3爪。日本は中国から見たら庶民の国なのかと思いきや、これにはいくつかの説があります。
・日本に中国から伝わった時代にはまだ5爪の龍が存在していいない時代だった。
・妖怪に3爪が多いため、それをなぞった
・天、地、海の三界を治めることを意味している
・3という数字を好んでいたから
余談ですが、日本の多くの龍は3爪、もしくは4爪です。ドラゴンボールの神龍は4爪、カイリューもリザードンもレックウザも3爪とマンガやゲームの世界でもそのルールは守られています。
しかし、ここの雲龍図は5爪。この龍が描かれた平成という時代が、それまでの価値観とは変わっていたことを示しているのではないでしょうか。
このあとは、バス停《天龍寺前》から清滝行きのバスに乗り、愛宕念仏寺へと向かいます。
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[…] 海のような青と緑の背景の上を、白色、黄色、紅色、瑠璃色の4色の龍が並びます。中国皇帝の象徴である龍、爪の数はやっぱり5つです。※龍の爪の数については天龍寺の記事にて […]