妙心寺の塔頭寺院である退蔵院(たいぞういん)。室町時代の絵師が造った枯山水庭園や、昭和の名庭である余香苑など、禅の思想が詰まった庭園が魅力の寺院です。国宝の瓢鮎図に描かれた謎に向き合ってみるのもおすすめです。
妙心寺の塔頭・退蔵院
妙心寺は臨済宗の寺院。臨済宗の寺院は多数存在していますが、そのうち6割を占める妙心寺派の大本山にあたる、非常い格式の高いお寺です。
江戸時代に建てられた仏殿や法堂など重厚な伽藍に加えて、敷地内には40に及ぶ多数の塔頭寺院が建っています。
今回ご紹介する退蔵院も、そんな塔頭寺院の一つ。創建は1404年、無因宗因という僧によって開かれました。
画家がつくった枯山水
順路を進むと、最初に見えてくるのが本堂(方丈)。靴を脱いで上がることができます。
本堂から見えるのは、元信の庭。室町時代の狩野派の画家である狩野元信が造った庭。作庭家ではなく画家による作という珍しい庭園です。
白砂が敷かれた枯山水庭園。ツバキやマツなどの常緑樹を中心に植えられており、変わらない美しさを表しているとも言われています。
紅しだれと陰陽の庭
訪れる人を出迎えるのは、立派な紅しだれ桜。枝を大きく広げた姿が美しい、退蔵院のシンボルです。平安神宮にある紅しだれ桜の孫桜であり、2013年にはJR東海の「そうだ 京都、行こう。」にも使用されました。
紅しだれ桜に向かって左側には陽の庭。7つの石が配置された枯山水庭園で、敷き詰められた白砂で明るい印象に仕上げています。
陽と来たら、もちろん陰も。陽の庭の対面には、8つの石が配置された陰の庭があります。陽が白砂であったのに対し、陰は黒砂で少しダークな雰囲気です。
昭和の名庭園・余香苑
境内の奥に広がる庭園は「余香苑(よこうえん)」。先ほどの元信の庭や陰陽の庭は枯山水でしたが、こちらはひょうたん池を中心とした池泉庭園。
この庭園は、1963年より3年の月日をかけて造られたもの。手掛けたのは中根金作。同じく京都にある「城南宮楽水苑」や、島根県の「足立美術館」など、各地に作品を残しており、「昭和の小堀遠州」と称された作庭家です。
庭園内には水琴窟もあります。つくばい(手水鉢)の下には瓶が埋め込まれており、竹筒に耳を当てると、水が中に落ちるたびに残響たっぷりな音が聞こえてきます。
ひょうたんでナマズがとれるのか
本堂内には、国宝の瓢鮎図(ひょうねんず)の模本も展示されています。
これは、ひょうたんでナマズを抑えるという公案(禅宗における問答)を題材とした水墨画。日本では「鮎」の字はアユを指しますが、中国ではナマズを意味しています。
つるっとしたヒョウタンでぬるっとしたナマズを抑える、一見すると不可能に見えるこの行いは、答えのないわゆる禅問答。悟りの不可思議を描いたとされていますが、ここに来たら「どうすればヒョウタンでナマズを抑えられるか」を少し考えてみるのもまた面白いです。
そういえば、先ほどの余香苑の池の名前は「ひょうたん池」でした。もしかして、ひょうたん池にナマズを放つというのが一つの回答であったりするのかもしれませんね。
(この公案について、かつて勝林寺にてじっくり考えたことがあります・・・。)
アクセスと拝観情報
JR山陰(嵯峨野)線の花園駅より徒歩7分。バスの場合はバス停《妙心寺北門前》より徒歩5分ほど。
拝観時間 | 9:00~17:00 |
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料金 | 600円 |
公式サイト | http://www.taizoin.com/ |
※掲載の情報は2023年3月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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