絵画のような額縁庭園と力強い五葉松『宝泉院』(京都市左京区)

京都府

三千院のさらに奥にある、とても静かな雰囲気の寺院。コンパクトながらも、額縁庭園や血天井といった見どころも多い。お抹茶をいただきながら、庭園を眺めてゆったりと過ごすことができます。

訪問日:2021/9/25(土)

大原の古刹

大原地区に建つ宝泉院(ほうせんいん)。1235年頃に創建されたといわれていますが、一時は断絶。その後、室町時代後期に幸淵という僧によって宝泉坊として開かれます。江戸時代の中期に宝泉院と改名され、現在にいたります。

三千院前の参道を奥まで進むと門が見えてきます。ほとんどの人は三千院止まりで、ここまで来ている人は稀。私もノーマークでしたが、たまたまグーグルマップで見かけた額縁庭園の写真があまりにも素敵だったので立ち寄ってみることにしました。

受付を済ませて進むと、すぐに堂内へと続きます。

額縁庭園こと盤桓園

宝泉院を代表するのがこちらの盤桓園(ばんかんえん)という庭園。柱と柱を額に見立てて鑑賞するため、「額縁庭園」とも呼ばれています。好きな角度で切り取って写真に収めてみるのも楽しいです。

拝観料にはお抹茶も含まれており、受付時にいただいた券を渡すと運んでいただけます。庭園を眺めながらのいっぷくは心がほっと休まります。お抹茶もマイルドなお味でとっても飲みやすいです!

縁側の片隅からは2つの竹が伸びています。こちらは水琴窟につながっており、耳をあてると澄んだ音色が聴こえてきます。使用されているのは、サヌカイトこと讃岐岩。叩くと良い音がするという性質を持ち、石琴などの楽器に利用されることもある岩石です。

「盤桓」には「うろうろする/ぐずぐずする」という意味があります。転じて「立ち去りがたい」という意味が込められているそうです。

時の流れを感じる五葉の松

中央にそびえるのは立派な松。樹高11mにもおよぶ扇形に広がる五葉松で、京都市指定の天然記念物にも指定されています。力強く枝葉を広げる姿は雄大で、ついつい見とれてしまいます。

この松は樹齢700年といわれています。宝泉坊として開かれたのが室町時代後期(1500年頃)とすると、当時の樹齢は200年ほど。まだそれほど大きな松ではなかったんじゃないかな・・・。そう考えると、今の時代だからこそこれほどの景色が楽しめるんだろうなぁ、と何だか感慨深い気持ちになってきました。

鳥居元忠の血天井

それは関ヶ原の戦いの前哨戦といわれる伏見城の戦いでのこと。40,000人といわれる西軍の包囲に対し、わずか2,000人弱で迎え撃った東軍の鳥居元忠。徳川家康のために玉砕覚悟で西軍を一手に引き受けた元忠は、伏見城にて自刃します。

彼らを慰め、そしてその忠義を讃えるため、自刃した場所の血染めの畳は江戸城の伏見櫓に掲げられ、のちに元忠を祀る精忠神社の畳塚へと納められます。床板は血天井として、この宝泉院にて祀られ、供養されています。

血天井ときくと、真っ赤にそまったおどろおどろしいものを想像してしまいますが、実際のところ血の跡はそこまで目立っていません。

なお、床板が納められているのはここだけではありません。養源院、正伝寺、源光庵など京都の各寺に、同じように血天井として伝えられています。

壮大な岩庭・宝楽園

境内には、歩いてめぐる回遊式庭園も造られています。こちらは2005年に造られた宝楽園という名前のお庭。約300トンもの巨石をたっぷりと使用した迫力ある岩庭で、長野県の園冶(えんや)庭園研究企画創作所によって造られました。

橋のように掛けられた岩を見るといかにも水が流れているような気がしますが、水を用いない枯山水庭園。下を流れているのは白砂の大河です。

環状列石が配置された蹲い(つくばい)。古代先人仏舎利を表現しているそうです。古代先人仏舎利って何でしょうか。仏舎利塔ではなく仏舎利、ということはまさか骨を表しているのでしょうか・・・?

規模としてはそれほど大きくないのですが、立体的な庭園はかなり見ごたえがあります。モダンな感性や壮大な世界観を感じさせてくれる作品でした。

大原問答の舞台・勝林院

すぐ隣には宝泉院の本寺である勝林院があり、拝観料不要で自由に見学することができます。

ここは、かつて天台宗の顕真が浄土宗の法然を招き、専修念仏について論議した「大原問答」が行われた場所としても知られています。

顕真をはじめ、大勢の仏教学者から難問を投げかけられた法然。大ピンチかと思いきや、全ての問答にはっきりと回答。その際に手から光明を放ったとされる本尊の阿弥陀如来は、今も拝観することができます。

この出来事が起こったとき、法然の弟子であった熊谷直実は「万が一、師匠が敗れるようなことがあったなら相手を討とう」とナタを隠しもっていました。しかし、法然に諭されてナタを放棄。その場所は、現在「鉈捨薮跡(なたすてやぶのあと)」となっています。(エピソードは面白いのですが、特に何があるわけでも・・・)

熊谷直実といえば源平合戦に参加した武将として有名ですが、戦いの後に出家して法然の弟子となっています。

アクセスと拝観情報

京都駅から約60分のバス停《大原》より徒歩10分ほど。

駐車場は無いため、周辺の有料駐車場を利用します。国道367号沿いに大きな駐車場がありますが、三千院や宝泉院方面へ細い道を進む途中にもたくさんあります。料金はだいたい300~500円程度でした。

拝観時間 9:00~17:00
料金 800円
公式サイト http://www.hosenin.net/

※掲載の情報は2021年12月時点のものです。最新情報は公式サイトにてご確認ください。

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