諏訪湖にたたずむ不戦の浮城『高島城』(諏訪市)

長野県

長野県の諏訪湖から600mほどの場所に建つ湖城。戦国時代に造られた歴史を持つ城で、「諏訪の浮城」とも呼ばれていました。戦国時代には多くの大名が入れ替わり支配していたこの土地、高島城にはどのような歴史があるのでしょうか。

2021/7/24(土)

諏訪湖に建つ天守閣

諏訪湖の湖畔に建つ高島城。周辺は高島公園が広がっており、桜の名所としても知られています。

かつては諏訪湖とその河川による湿地に囲まれていたため、諏訪の浮城と称されていました。また、滋賀県大津市の琵琶湖畔に建つ膳所城、島根県松江市の宍道湖畔に建つ松江城と合わせて、三大湖城とも呼ばれています。

内部は歴史資料が並ぶ博物館。甲冑や書物、高島藩に関わる様々な史料などが展示されています。解説もつけられていますが、少々難しめな印象です。

揺れ動く諏訪の支配

中世、諏訪は様々な大名の領地へと変遷を続けます。

もともとこの諏訪郡は武田氏の領地でしたが、織田信長の甲州征伐により武田氏が滅ばされると、信長の家臣である河尻秀隆の領地へ。さらに本能寺の変によって信長が討たれると、諏訪頼忠の支配下になります。

小田原攻めによる北条氏滅亡により徳川家康が関東移封となると、頼忠は主君である家康に従い武蔵国へ。代わりに功績のあった豊臣秀吉の家臣である日根野高吉の領地へと変わります。

関ヶ原の戦いの後、日根野氏は下野へ移封となり、代わりに諏訪氏が再びこの地へと帰ります。諏訪頼水から、以後は270年間諏訪氏の統治となりました。

高島城のヒストリー

様々な大名によって治められてきた場所ですが、この高島城が築城されたのは、日根野高吉による支配のとき。1592~1598年の7年間で、高吉は高島城を完成させます。

高吉は、もともと織田信長や豊臣秀吉のもとで普請(ふしん=建築工事)を担当していた人物。そのため、石垣を積んで瓦屋根の天守を築く織豊系城郭(しょくほうけいじょうかく)とも呼ばれる近世城郭の姿をしていました。

諏訪氏の支配へとなった江戸時代には、諏訪藩の政庁・藩主居所として活用。明治時代に廃藩置県が行われると一時は県庁舎となるも、1875年には天守閣は撤去。高島公園として一般に開放されます。

1970年に多くの市民の募金活動によって天守や櫓が再建されます。明治時代に取り壊されたのですが、なんと当時の写真が残されており、それをもとに忠実に再建されました。

諏訪という土地の支配者は多く入れ替わっていましたが、この高島城そのものには戦いの歴史は無いよう。築城が戦国末期であり、すぐに戦乱の少ない江戸時代に突入したため戦う必要が無かったと考えられます。

戦うことを目的として作られた戦国時代の城は政治には不向きであることが多く、戦国時代の終わりとともに役目を終えるケースが多々あります。しかし、この高島城は平地に造られており、なおかつ諏訪湖を使った水運にも優れていたため、息が長く続いたのでしょう。

天守閣からの眺め

最上階は展望台。東側と西側の2方面にテラスが作られており、外に出ることができます。諏訪湖から吹き抜ける風が、とっても爽快。

東側はお堀や庭園が見えます。かつては本丸や二の丸が広がっていましたが、現在はびっしりと町並みが続いています。天気が良いと、山々の合間に富士山も顔を見せるそう。

西側からは広がる諏訪湖と、その奥にかまえる日本アルプスの山々が見渡せます。こちらも天気が良いと、北アルプスの穂高連峰まで見えるそうです。

かつて諏訪湖の湖岸はこのお城のすぐそばでしたが、埋立や干拓によって縮小され、現在の位置にまで後退しています。当時はまさに湖に浮かぶ「浮城」の姿をしていたことでしょう。

梶の葉の家紋

諏訪氏の家紋は「丸に諏訪梶の葉」という紋章。この紋は諏訪大社の神紋と非常に似通っています。

これは、もともと諏訪氏は諏訪大社の神官であったため。戦国時代に武士と化してこの地を治めるようになったため、この紋を家紋として使用したそう。

よく見ると、諏訪大社でも上社と下社では根っこの数が異なっています。見比べてみると、諏訪氏の家紋は上社とほぼ同じであるようです。

ところで梶の葉っていったいどんな葉っぱでしょうか?近くには葉っぱの実物も展示されていました。

梶は桑の仲間で、和紙の材料や着物の繊維として利用されてきた植物。供え物の敷物や神事に用いられるため、神社の境内に植えられることも多いそうです。

アクセスと営業情報

JR中央本線の上諏訪駅から徒歩10分。車の場合は中央自動車道の諏訪ICから約15分。天守閣のすぐ西側に無料駐車場をそなえています。

開館時間 9:00~17:30 ※10〜3月は16:30まで
休館日 月曜
料金 310円
公式サイト https://www.suwakanko.jp/point/takashimajo/

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