石材の産地として知られる大谷には、非常に歴史のある磨崖仏を安置した大谷寺があります。石彫りの巨大な平和観音や、遺跡から発掘された縄文時代の人骨、池に浮かぶ弁天堂など見どころも多く、大谷の歴史を知ることができる場所です。
岩壁に埋め込まれたお堂
大谷寺は巨大な岩の前に立つお寺。朱色の仁王門の背後に迫りくる岩壁は迫力満点です。
拝観料500円で境内に入ると、岩肌に埋め込まれたように観音堂が建てられています。創建は平安時代初期といわれている古刹で、弘法大師・空海によって開かれたとも言われています。一時は衰退するものの、江戸時代に入ると天海の弟子である伝海によって再建。現在は天台宗のお寺となっています。
お堂を横から見ると、岩と一体化している様子がよくわかります。まるで岩の中から出てきたように造られていますが、この理由はお堂の中に入るとわかります。
10体の磨崖仏
堂内は奥の岩側の壁が無く、岩肌がむき出しに。そこには、岩をくり抜いて彫られた大谷観音が安置されています。弘法大師作と伝わる4mの千手観音で、制作された当時は金箔が塗られていたと考えられています。
このように岩を掘って造られた仏像を「磨崖仏(まがいぶつ)」と呼びます。磨崖仏の多くは風雨に晒されており、移動もできないため風化していくことが多いです。しかし、ここでは守るようにお堂が建てられているため、保存状態がとても良いのが特徴です。
奥に進むと、釈迦三尊、薬師三尊、阿弥陀三尊と磨崖仏が続きます。合計で9体の磨崖仏が岩面に並ぶ姿は圧巻です。
大谷寺岩陰遺跡
大谷寺の洞穴は、昭和40年の発掘調査で縄文・弥生時代の遺跡であることが判明しました。もともとは横穴式住居であったと考えられており、大谷寺岩陰遺跡という名が付けられています。
遺跡からは一万年前の縄文土器、シカやイノシシなど動物の骨、貝がらなどが発掘されており、大谷寺の宝物館では様々な出土品が展示されています。
中でも、印象的なのは発掘された縄文人の骨の実物。この人骨は、放射性炭素法とフッ素法により、11,000年前のものと測定されたそうです。
横臥屈葬という体を折り曲げた状態で埋葬されており、年齢は20歳前後、身長は154cmの男性とされています。
弁天堂と白ヘビ
境内にある池には真っ赤な弁天堂が浮かんでおり、弁財天が祀られています。ここの弁財天は開運・財運の神様です。
参拝後は、弁天堂周辺に置かれた白蛇の頭に触れると良いそう。このヘビは石と一体化しているため、石を削って作っているようです。
こちらの白ヘビはもともと人々に悪さをする毒蛇でした。この地に訪れた弘法大師により退治され改心した毒蛇は白ヘビとなり、それ以来弁財天に仕えているそう。
高くそびえる平和観音
大谷寺のすぐ近くには大きな平和観音が立っています。岩肌に刻まれた大きな石像で、その高さは27mとかなりの大きさです。
この観音像は、第二次世界大戦の戦没者を弔うため、そして世界平和を祈るために建立されたもの。採掘場の壁面を利用しているのですが、6年の歳月をかけて手彫りによって造られました。
この観音像向かって左側には、階段が設置されています。登っていくと、観音像の肩の少し下、胸あたりに作られた広場へと繋がります。
ここは大谷公園や大谷寺を一望できる展望台となっています。公園を取り囲む城壁のような岩壁はなかなかの迫力です。
平和観音のある大谷公園は、「親子がえる」「スルス岩」「天狗の投石」など奇岩が多く並んでおり、採石場跡もあります。大谷地区全体の景観をコンパクトにまとめた公園となっています。
アクセスと営業情報
車の場合は東北自動車道の宇都宮ICから10分ほど。バスの場合は、宇都宮駅から30分のバス停《大谷観音前》で下車後、徒歩3分ほど。
大谷資料館のすぐ近くにあるので、合わせての訪問がおすすめです。
休館日:12~3月の木曜、12/21~31
料金:500円
駐車場はお寺の目の前にあり、参拝する場合は無料。それ以外の場合は500円必要ですが、ここに止めて参拝しない人はいるのでしょうか。
なお、少し離れたところに無料の市営駐車場もあり、そこから歩くと大谷公園(平和観音)→大谷寺の順で見て回れます。周辺には、奇岩も多くあるため、のんびり歩いてみるのも楽しそうです。
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