モダンアートと伝統工芸の魅力『京都国立近代美術館』(京都市左京区)

京都府

京都を中心に関西・西日本の美術を多数収蔵したアートミュージアム。今回は収蔵作品を展示しているコレクション展へ。ユニークなテーマのもと、近代美術や工芸作品を多数鑑賞することができました。

訪問日:2025/3/29(土) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

モダンな建築の美術館

京都市京セラ美術館や細見美術館など、美術館が多く集まる左京区の岡崎エリア。今回ご紹介する京都国立近代美術館も、そんなミュージアムのひとつ。

1963年に国立近代美術館京都分館として開館。1967年に独立して京都国立近代美術館へ。現在の建物は1986年に竣工したものです。

設計を担当したのは槇文彦。表参道の「スパイラル」や「幕張メッセ」など、全国各地に多数の作品を残している世界的に知られる建築家です。

縦横に広がる軸線(グリッド)が印象的。これは平安遷都から1300年つづく京都の条坊制を表しているそう。また、建物の高さは近くにそびえる平安神宮の大鳥居よりも低くなっているとのことです。

多彩な展覧会

館内では「展覧会(特別展)」と「コレクション・ギャラリー(収蔵作品展)」の2つの展覧会を開催しています。

<展覧会>
若きポーランド-色彩と魂の詩うた 1890-1918
会期:2025.03.25 tue. – 06.29 sun.
料金:2,000円
<コレクション・ギャラリー>
2025年度 第1回コレクション展
会期:2025.03.13 thu. – 06.29 sun.
料金:430円

今回は時間の都合でコレクション展だけを閲覧。展示は以下の6つのセクションに分かれています。ひとつひとつがとてもユニークなテーマです。

・特別展示:日本のオルガ・ボズナンスカ
・大正時代の日本画
・彼女たちの「戦後」
・近代美術館の工芸コレクション
・音楽とともに
・すわって、みる

ということで、ここからはコレクション展で私が気になった作品を勝手に紹介させていただきますね!!

日本の近代美術作品

川村曼舟《古都の春》

様々な展示の中でも目を引くのは日本の近代美術作品。こちらは大正7年に描かれた掛け軸で、サクラと五重塔といった春の京都の幻想が広がります。屋根の一部は真っ白に塗られており、日の光を再現しています。

髙谷仙外《象と鳩》

屏風いっぱいに描かれた大きなゾウが印象的な作品。迫力のある姿ですが、目が行くのは足につけられた鎖。描かないこともできたはずですが、あえて描いたのは、人間によって飼われている生き物であるということを描きたかったのではないでしょうか。その周りに集まるハトも、尾羽根の大きなクジャクバトタイプ。こちらもまた観賞用に品種改良されたもの。こちらもあえて選んだのではという気になってきます。人と生き物のかかわりが裏のテーマかもしれません。

野長瀬晩花《夕陽に帰る漁夫》

真っ赤な世界を歩く人々が描かれた作品。背負っているのは漁具と巻かれた縄。それが槍と盾に見え、戦いに向かうような勇ましさも感じます。

岸田劉生《麗子弾絃図》

岸田劉生といえば、娘をモデルとした麗子シリーズ。その麗子が三味線の稽古に励む姿が描かれています。これまで見た麗子作品はお人形さんのようなイメージでしたが、はじめて動きのあるものに出会ってびっくりしました。

京を感じる伝統工芸

この美術館の活動のひとつの柱であるのが工芸。陶芸・染織など、京都ならではの品々が展示されています。

河井寛次郎《三色打薬扁壺》

赤、黒、緑という3色に彩られた壺。色彩はもちろんですが、扇形に開いた口や、膨らみのある体、そして突き出した足まで、どこを見ても非凡な存在感を放ちます。

北村武資《経錦着物「蒼苑」》

藍白の色彩があざやかな着物。こちらは重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝である北村武資の作品。他にも何枚か着物が展示されていました。

北大路魯山人《絵織部長板鉢》

描かれたのは笹のような模様。青とも緑ともつかない色味は、まさに織部焼といった色彩です。

コンテンポラリーな作品も

「彼女たちの戦後」というセクションでは、インパクトのある現代アートも展示されています。

宮本和子《糸の構成〈無題〉》

幾重にも張り巡らされた黄色い糸。中心の柱を軸に螺旋が造られているようですが、肝心なその「軸」がまったく見えません。あるはずのものが見えないだけで、こんなにも気になってしまうなんて。

三島喜美代《かご2017》

缶のゴミ箱、受け止めきれず、まわりにあふれてしまっています。公園などでよく見かける風景かと思いきや、じっくり見ると缶は本物そっくりなニセモノ。金属ですらないようですが、いったい何でできているのでしょうか。

坪井明日香《私小説》(手前)、《パリに残したローブから:マリーのイメージ》(奥)

メタリックな作品ですが、実は陶器。手でちぎったようなラフな造形ではあるものの、しっかりとした存在感を放ちます。この坪井明日香さんは、戦後に女性陶芸家のグループ「女流陶芸」を立ち上げた人物。

先程の《かご2017》の缶ももしかしたら陶器ではと思い、作品名記された素材を見ると大正解でした!

 

展覧会の最後を彩るのは、アンリ・マティス《ジャズ》。カラフルで躍動感あふれる作品は、ポップなエンディングテーマのようでした。

アクセスと営業情報

地下鉄東西線「東山」駅下車、1番出口より徒歩約10分。

開館時間 10:00~18:00
休館日 月曜
料金 コレクション展:430円
公式サイト https://www.momak.go.jp/

※掲載の情報は2025年3月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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