震災と戦災を今に伝える『東京都復興記念館』(墨田区)

東京都(23区)

関東大震災と東京大空襲、2度の大災害を受けた都市・東京。その被害の甚大さと、そこからの復興を現代に伝える無料のミュージアム。100年の歴史を持つ重厚な建物も、そこに説得力を持たせます。

2021/2/12(土)

重厚感のある博物館

両国駅にある横網町(よこあみちょう)公園内。そこにある東京都復興記念館は、1923年に発生した関東大震災の被害を伝えるために、1931年に作られた歴史ある施設。その後、1945年の東京大空襲を経て、戦災関係資料が加わりました。

この建物は空襲を免れた昭和初期の建築。石造りの館内は、ずっしりと重厚な空気が流れます。おばちゃんの話では、たまに雨漏りがあるそうです。

「関東大震災」

1923年9月1日11時58分に発生した関東大地震。その規模はマグニチュード7.9と強大で、東京都の最大震度6という関東大震災を引き起こしました。

余震も多く、阪神淡路大震災クラスのマグニチュード7以上の余震は6つ。津波や土砂災害といった被害も多くありましたが、中でも最も被害が大きかったのが火災
昼時で火を使っている家が多かったこと、家屋が木製で密集していたこと、台風による強風が吹いていたことなど、様々な条件が重なり、火災は拡大。東京を焼け野原にしました。

鎮火したのは2日後の9月3日の午前10時頃。命を落とした方・行方不明者は105,000人にも及び、家屋は293,000棟にも及びます。火災が止まった焼け止まり線の多くは、広場や崖、樹木であったことがわかり、その後公園緑地の重要性が認識されるようになりました。

館内には焼け跡から見つかった様々な物が展示されています。時計や貨幣、ぐにゃぐにゃと形を変えたガラス瓶など小さな物から、金庫やトタン、銅像など大きな物までいくつも並んでおり、火災の激しさを物語ります。

当時の写真も多く展示されています。こちらは乗客が押し寄せた鉄道。みな地方へ避難するため、機関車にしがみついてでも乗ろうとしていたそう。インドなどのアジア諸国の写真で見かけたことがありますが、日本でもこんな光景があったとはにわかに信じがたいです。

印象的なのは、竹久夢二が描いた「東京災難画信」。震災後の町の様子を描いたスケッチと、そこに細やかな描写で書かれた言葉が添えられています。都新聞に連載していたものであるため一つ一つが短く、非常に読みやすいです。生々しく表現されているため、胸が締め付けられます。

震災後の東京の様子を描いた絵画も多数展示されています。特に徳永柳洲による横幅5m以上にも及ぶ大作「上野公園より見たる灰燼の帝都」は圧巻。焼け野原となった東京の町、立ち上る煙と、嘘みたいに晴れた青空が印象的です。

「東京大空襲」

1941年のハワイ真珠湾攻撃から敵対関係となった日本とアメリカ。当初優勢を誇った日本軍も次第に押されるようになっていきます。1944年にサイパン島、グアム・テニアン島を占領されると、本土爆撃が開始。200以上の都市が爆撃され、50万人以上の方が犠牲となりました。

1945年3月10日に行われた東京大空襲では、300機を越えるB29爆撃機による猛攻を受け8〜10万人もの人が命を落とします。関東大震災から立ち直った東京の町は、再び焼け野原へと変わってまいます。

壁に貼られているのは、戦時中の学徒の写真。1943年に学徒動員体制が敷かれると、学生たちは戦地へと送り込まれていきました。

防空頭巾や消防団員のしころ帽・防火服などの実物展示も。空襲にそなえた衣服は、非常に状態が良く保存されています。

屋外にも続く展示

建物の隣には、関東大震災の被災品を展示した屋外ギャラリーが設けられています。溶けた鉄柱、溶解して大きな塊となったクギ、大きな鉄管など、様々なものが展示されています。

復興記念館のすぐ近くには東京空襲犠牲者を追悼し平和を記念する碑が設置されています。彫刻家・土屋公雄の作品で、タイトルは「記憶の場所」。内部には犠牲者の方々の名前を記録した東京空襲犠牲者名簿が納められているそう。

最大の被害があった場所

この東京都復興記念館が建っている横網町公園は、震災当時空き地が広がっていました。地域の人々の唯一の避難所として約40,000人もの人が集まってきたそう。

しかし、ここで悲劇が起こります。周囲から火災が迫り、避難していたはずの人々は逃げ場を失うという最悪の事態に。火の手は持ち出した家財道具などに引火、強風により火災旋風も発生し、避難所は一転して地獄絵図に変わります。避難民の9割以上に及ぶ38,000人もの人が命を落としてしまいました。

最も悲惨であったこの地には、震災後に震災記念堂が建てられます。そこに戦災遭難者の霊を合祀したのがこちらの東京都慰霊堂。毎年3月10日にはここで慰霊大法要が行われています。

アクセスと営業情報

JR総武線の両国駅から徒歩10分、都営地下鉄大江戸線両国駅からは徒歩2分ほど。

開館時間:9:00〜16:30
休館日:月曜、年末年始
料金:無料

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