平安時代から続く長い歴史を持つ寺院。広々とした境内は「お堂エリア」と「大沢池エリア」の2つに分かれています。その大半を占める大沢池は、実は人工の池。いったい何のために造られたのでしょうか?
御所としての歴史を持つ寺院
真言宗大覚寺派の大本山、大覚寺。創建は貞観18年(876年)。嵯峨天皇の離宮を、皇女の正子内親王(淳和天皇皇后)が寺に改めたのがはじまりです。

その後、出家して法皇となった後宇多天皇が伽藍の整備を行います。ここで院政を行ったため「嵯峨御所」とも呼ばれるように。応仁2年(1468年)の応仁の乱により焼失するも、江戸時代の寛永年間(1624~1644年)に復興を果たしました。
そんな大覚寺の境内は非常に広く、「お堂エリア」と「大沢池エリア」の2エリアに分かれています。
それぞれ受付があるためどちらからでも入ることができますが、今回は最初に「お堂エリア」へ行き、通り抜けて「大沢池エリア」へ向かいました!

宸殿と村雨の廊下
ということで、まずは「お堂エリア」へ。複数のお堂がありますが、いずれも廊下で繋がっています。受付にて靴を脱ぎ、そのまま靴を持ってお堂をめぐるというスタイルなのです。
来訪者を出迎えるのは、風格のある輿(こし)。九曜菊の紋が記されており、後宇多法皇が乗られた、あるいは後に復元されたと考えられています。

こちらの宸殿は江戸時代の初めの延宝年間に、後水尾天皇より女御御所から賜ったもの。「蔀(しとみ)」という格子戸が連なる様子は壮観です。狩野山楽による、牡丹や梅が描かれた襖絵も見ることできます。

宸殿と心経前殿を結ぶ回廊は、特徴的な姿。縦の柱を雨、直角に折れ曲がっている回廊を稲光に例え、「村雨の廊下」と呼ばれています。この辺りの床は「ウグイス張り」にもなっており、歩くとぴよぴよと音が鳴ったりもします。

本堂まで連なる堂宇
宸殿の先もお堂は続きます。こちらは大正14年(1925年)に建造された御影堂(心経前殿)。嵯峨天皇、弘法大師(秘鍵大師)、後宇多法皇、恒寂入道親王の尊像を祀っています。

勅封心経殿も、御影堂と同じく大正14年(1925年)の建築。内部には、嵯峨天皇をはじめとした多数の般若心経が納められ、薬師如来像が祀られています。八角形の姿は、法隆寺の夢殿を模しているそうです。

京都東山にあった安井門跡蓮華光院の御影堂を移築した安井堂。後水尾天皇の等身大の僧形像が納められたお堂です。格天井には法具や琵琶、草花が描かれ、折上天井には三爪の雲龍図が描かれているという、見どころたっぷりなお堂です。

江戸時代中期に建立された五大堂。不動明王、降三世明王、金剛夜叉明王、軍荼利明王、大威徳明王の五大明王を祀る、本堂にあたるお堂です。

なお、五大堂の堂内は冷房があります!!溶けるほど暑い日に訪問したので、この設備に感動しました。
日本最古の大沢池
五大堂の先に広がるのは周囲約1kmの大沢池。お堂めぐりの果てに見える広大な風景は、開放的な気持ちにさせてくれます。

ここから先は「大沢池エリア」。靴を履いて、池のまわりを散策するルートになります。

この池は実は自然の池ではなく人工の池。といっても、平安時代の嵯峨天皇の離宮嵯時代に唐(中国)の洞庭湖を模して造ったという非常に歴史の深いもの。実は「日本最古の人工の林泉」でもあるそう。
その目的は庭園としての観賞用であり、また音楽や舟遊びなどの王朝文化の場としての利用であったそう。現在も池にせり出した池舞台にて、秋の「観月の夕べ」や特別行事の際に、雅楽・舞楽の奉納やお茶会などが行われているそうです。

池のまわりの見どころ
そんな広々とした大沢池のまわりには、いくつかの見どころがあります。

こちらの建造物は心経宝塔。昭和42年(1967)、嵯峨天皇心経写経1150年を記念して建立されたもの。内部には秘鍵大師尊像を祀っているそうです。秘鍵大師とは何者かと思ったのですが、どうやら空海のこと。「弘法大師」は知名度が高いですが、他にも様々な大師号を持っているのです。
立派な御神木のツブラジイと、すぐそばに立つ天神社。菅原道真を祀る神社です。

大沢池と合わせて造られた名古曽の滝跡もあります。現在水は流れておりませんが、石組みなどの要素は見ることができます。

他にも、もみじロード、梅林など季節によって見頃が変わるポイントも多数。9月に訪問したところ、ハスの葉が大量に広がり、一部にはピンクの花を咲かせている株も。季節によって様々な姿になるのでしょうね。

これにて大沢池の1周もおわり、大沢池側の出口へ。見学所要時間は、「お堂エリア」と「大沢池エリア」、2つめぐって1時間ちょうどでした。けっこうゆっくり見たつもりでしたが思ったよりも早く見終えました。
お次は20分ほど歩いて「博物館さがの人形の家」へと向かいます。訪問した9月の上旬は灼熱状態。日傘を差しても汗が止まりません!
アクセスと参拝情報
・JR山陰本線の「嵯峨嵐山駅」から徒歩20分
・嵐電「嵐電嵯峨駅」「嵐山駅」から徒歩25分
| 拝観時間 | 9:00~17:00 |
|---|---|
| 料金 | お堂エリア:500円 大沢池エリア:300円 |
| 公式サイト | https://www.daikakuji.or.jp/ |
※掲載の情報は2025年9月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。


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