石炭が動力であった時代に造られた機関庫および転車台。豊後森駅近くには、現在もその姿が残されており、自由に見学することが可能。退廃的な姿とともに、その歴史を現代に伝えています。
今も残る機関庫
ここは大分県の玖珠町(くすまち)。JR九州の久大本線・豊後森駅の近くにそびえ立つのは、廃墟感あふれる謎の構造物。絡みついたツタや割れたガラスが廃モノ好きのニーズに刺さりまくります。
ここは久大本線豊後森駅の東側にあった豊後森機関庫の跡。かつて石炭の時代に、多数の機関車を保管・整備していた施設です。
放射線状に広がる扇形の機関庫は大迫力。中央には転車台(ターンテーブル)があり、機関庫に入出庫する車両の向きを調整していました。
豊後森機関庫の歴史
1929年に豊後森駅が開業、その5年後となる1934年に豊後森機関庫は開設されました。
久留米駅と大分駅を結ぶ久大線の途中駅であり、主要駅でもあった豊後森駅。最盛期となる1960年代は、多くの従業員とその家族が暮らすにぎやかな町であったそう。映画館やパチンコ店などの娯楽施設もあり、鉄道のまちとして繁栄していました。
動力のディーゼル化に伴い1971年に役割を終えます。一時は解体の危機に陥りますが、20,000人以上の署名が集まり保存されることが決定。
2009年には機関庫及び転車台が「旧豊後森機関区の関連遺産」として近代化産業遺産に、2012年には国の登録有形文化財、2017年には日本遺産の構成文化財にも指定されました。
廃止の理由をさらに詳しく
「ディーゼル化にともない」と書きましたが、それで機関庫が廃止というのは少々結び付けにくい気がします。車両ならともかく、機関庫はそのまま継続して利用していても良かったのでは・・・・?その疑問解決します!
まずこの機関庫は車両を保管するだけでなく、蒸気機関車の「水と石炭の補給基地」としての側面が強い施設でした。久留米と大分の中間あたりということもあり、ここで石炭を補給する必要があったのです。しかし、ディーゼル車は補給が不要、そのため役割が薄れていきます。
さらに、ディーゼル車は前後どちらでも走ることができるため、回転する必要がありません。動力の変化は機関庫には影響無さそうと思ったのですが、めっちゃ影響してましたね!!
ホンモノの蒸気機関車
機関庫のそばに置かれているこちらは、国鉄9600形蒸気機関車「29612」という本物の蒸気機関車。「キューロク」という愛称で親しまれていたそうです。
1919年から1974年までの55年間、長崎本線や唐津線を走っていたそう。長崎原爆投下時には多くの被災者を載せて走ったという歴史も持ちます。
もともとは福岡県にて展示されていましたが、老朽化にともない解体の危機に。そんな中、玖珠町に無償譲渡され、きれいに改修された後保存・展示されることとなりました。
ミニミュージアムも併設
機関庫のそばには、小さなミュージアムも建っています。入館料は100円、靴を脱いで入るスタイルです。
館内には、国鉄時代の駅員さんの帽子、当時の制御盤、車内でお茶を飲むために販売された汽車土瓶、当時の貴重な写真などが展示されています。
当時の姿を再現した機関庫の模型も。こんな風に多数の車両がここから出入りしていたのですね。
スタッフのおじさんがとても気さくな方で、機関庫のことはもちろん、周辺の情報などもいろいろと教えてくれました。ということで、お次は龍門の滝へと向かいます!
ちなみに、機関庫の前にはあの扉が置かれています!
どこでもドア・・・ではなく、新海誠監督のアニメ映画『すずめの戸締まり』を再現した扉。見たことがある方はきっとテンションが上がるはずです・・・!
アクセスと営業情報
JR豊後森駅から徒歩5分ほど。
車の場合は駐車場要注意!「豊後森機関庫公園」へ向かっても停める場所がありません。下の地図の場所が駐車場となっていました。
営業時間 | 見学自由 ※ミュージアムは10:00~16:00 |
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料金 | 無料 ※ミュージアムは100円 |
公式サイト | https://kusumachi.jp/pg559.html |
※掲載の情報は2024年4月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
コメント
[…] すぐ近くには、かつての機関車の車庫や転車台を保存・展示した「旧豊後森機関庫」があります。車で10分ほどなので、合わせての訪問がおすすめです。 […]