戦争が変えた人々の暮らしを知るミュージアム『昭和館』(千代田区・九段下)

東京都(23区)

戦争によって生活が激変していく人々に焦点を当てた博物館。館内では、歴史を物語る実物や当時のニュース映像などが多数展示されています。一般的な戦争資料館や昭和ミュージアムとはちょっと趣きを異にする独特なミュージアムです。

訪問日:2024/9/1(日) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

九段下のミュージアム

ここは東京都千代田区九段下。日本武道館や靖国神社の側にはチタン製パネルで覆われた建物がそびえ立っています。こちらは昭和館という国立の博物館。戦中・戦後の日本国民の労苦を後世に伝えるためのミュージアムです。

特徴的な外観は、建築家・菊竹清訓によるもの。東大寺の正倉院をモチーフにしているそうです。

入口を進むと自動券売機があり、入館券を購入します。

1階にはニュースシアターと呼ばれる映像ルームがあります。当時のニュース映像が常に投影されており、出入りは自由。最初に少し見ておくと、当時の空気感に浸ってから展示を見ることができます。

展示室は7階と6階。受付は7階なので、エレベーターで最上階へと向かいます。ちなみに5階は映像・音響室、4階は図書室となっています。

リアルな展示内容

7階の展示室入口にあるトリックアート。昭和20年(1945年)5月25日に空襲の被害を受けた国会議事堂周辺が映し出されています。

ここから先は写真撮影禁止なので、一部パンフレットを写した写真をイメージとして掲載させていただきますね。

まず最初は兵役制度について。対象者に送られる「召集令状」、出征兵士の家にかかげられたという「出征軍人の表札」、出征する者の無事を祈って贈られた「千人針」といった品々が、実物や写真でリアルに展示されています。離れ離れになった家族間で交わされた手紙は、軍の検閲を受けて一部が、黒く塗りつぶされていました。

忍び寄る戦争の足音

昭和12年(1937年)の盧溝橋事件によってはじまった日中戦争。この頃はまだ生活における戦争の影響はそれほど大きくありません。氷を入れて利用する「木の冷蔵庫」、「木炭を入れるアイロン」、「蓄音機」や大きな「ラジオ」など、昭和初期の暮らしがわかる品々が並びます。

日中戦争を契機に国民精神総動員運動が開始されると、国民徴用・配給制度・金属回収令と、人々の生活は徐々に戦争に脅かされていきます。「日本人ならぜいたくは出来ない筈だ!」と書かれた看板、「日の丸弁当」や「すいとん」などの食品サンプル、皮革の代わりに竹で編まれたランドセルなどが並んでいます。

昭和16年(1941年)、尋常小学校が国民学校と改称され、教科書の内容も改変されていきます。学徒勤労動員も本格化、集団疎開も始まります。子供たちの遊び「戦争ごっこ」に使用されたラッパや鉄の兜、愛国心を養うための「アイコクイロハカルタ」など、教育そのものを変えてしまう軍国主義の恐ろしさを感じる内容です。

恐ろしい本土空襲

昭和17年(1942年)の本土初空襲以降、消火訓練や防空壕の設置、灯火管制など、銃後を守る体制づくりがなされていきます。展示されているのは防空頭巾やモンペの防空服装、空襲警報のサイレン、米軍の飛行機から巻かれた戦意喪失を目的としたビラなどが並びます。(※「銃後」というのは前線に対する戦場の後方、すなわち直接戦闘に関わらない人々や日本本土を指す言葉です。)

黒いカーテンが引かれている一角、ここだけ撮影OKなスポット。

開いてみると、描かれているのは防空壕とそこに隠れる人の姿。中に入り、カーテンをしめてスイッチを押すと、警報とともに爆撃音と振動が鳴り響きます。

ここまでが7階の展示。7階は戦中の内容でしたが、階段を降りた6階の展示室は戦後へと時代が変わります。そんな7階と6階をつなぐ階段の踊り場で流れるのは、天皇陛下から太平洋戦争終結を国民に知らせた玉音放送。音声に加えて文字での表記もあり、解説も読むことができます。

戦後の復興へ

戦争が終結すると、そこからは復興がはじまっていきます。罹災した面積は64500ha、罹災人口は約970万人、罹災戸数は約230万戸にも及びます。モニターでは、引揚者が帰郷しトラックの荷台で移動していく様子、看護師たちが引揚者に対してDDTの殺虫剤を散布している様子、さまざまなモノが売り買いされる闇市などが映し出されます。

大量に輸入された小麦粉を活用するために生産された「パン焼き器」、闇市の食事である「残飯シチュー」の食品サンプル、バケツと鉄兜を加工したかまど&鍋などが実物で展示されています。

校舎が焼失してしまったため、運動場や河原で開かれた青空教室のジオラマ、戦中の軍国主義的な内容が塗りつぶされた黒塗り教科書など、変わってゆく教育についても見ることができます。

昭和22年(1947年)以降、一部制限付きではありますが民間貿易が再開、さらに様々な統制が解除され娯楽やスポーツが蘇り、復興に向けた明るい兆しが見えてきます。数年後には、三種の神器と呼ばれる白黒テレビ・電気洗濯機・電気冷蔵庫が普及していきます。

井戸の水汲み体験コーナーも。いざやってみると、なかなかの重労働、蛇口ひねるだけで良い現代はなんと便利なことでしょうか。

行ってみた感想

日本武道館や靖国神社へ訪問する際にいつも前を通っており、ずっとずっと気になっていたミュージアム。九段下駅の出口からほぼ直結であり完全屋内型施設であるため、なんとなく雨の日に行こうと思ってタイミングをずっと待っていました。

今年、8月の終戦記念日を経てなんとなくそろそろ行ってみようかな?と思った日にちょうど雨が降ったので、呼ばれたような気がして訪問を決意しました。

戦争系の資料館ではありますが、戦争そのものではなく、あくまでそれによって脅かされた人々がテーマ。そのため、兵器や戦争の経緯などの展示はほとんど無く、時代が進む毎に変わっていく人々の暮らしがメインとなっています。

辛く苦しい内容が多いですが、それだけではありません。過酷な時代の中でも、明るく生きようとした姿が垣間見え、昭和の人々の力強さを感じられるスポットでした。

展示室の最後には「これなあに?」コーナーという、展示されている当時の道具の使い方を考える体験コーナーがあります。子供向けかなと思いきや、難易度は高めでした・・・!

アクセスと営業情報

都営新宿線、東京メトロ東西線・半蔵門線の「九段下駅」4番出口より徒歩1分。

開館時間 10:00~17:30
休館日 月曜、年末年始
料金 400円
公式サイト https://www.showakan.go.jp/

※掲載の情報は2024年8月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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