ついに再開した横浜美術館。最初の企画展は古代の土偶や埴輪から、幕末の開国、占領下の姿など歴史を感じることができる作品がずらり。印象的な写真作品やモダンアートも多数見ることができました!
みなとみらいの美術館
横浜美術館は1989年に横浜博覧会のパビリオンとして開館した美術館。ランドマークタワーをはじめとした、みなとみらいのビルに包まれるように建っています。
広がりを感じるシンメトリーなデザイン。建築を担当したのは丹下健三。広島平和記念資料館や国立代々木競技場など、多数の作品を手がけた世界的な建築家です。館内も御影石を使用した開放的なホール空間になっています。
この美術館、2021年3月より大規模改修工事のため休館していましたが、2025年2月ついにリニューアル後フルオープン!待ってました!
そんなわけで訪問時に開催されていたのはこちらの展覧会。ここからは、私が気になった作品を勝手に紹介させていただきますね!
会期:2025年2月8日(土)~6月2日(月)
古代の美術
最初に目に入るのはなんと土器や土偶!こちらの筒形土偶は都筑区の原出口遺跡から出土したもの。手足はありませんが、空を仰ぐ顔が付けられています。
埴輪もいます!こちらの盾持人形埴輪は、戸塚区上矢部町の富士山古墳から出土したもの。大きな盾を携えた姿は、被葬者がこの世を去ってからも護衛を続けていたのでしょう。
土偶や埴輪の実物に加えて、それを題材にした作品も。中島清之《古代より》は、戦後の考古学ブームの中で描かれた、縄文土器をテーマにした絵画。奥には埴輪をテーマにした作品も並んでいます。
幕末の貿易港
貿易港のひとつとして1859年に開港した横浜。それにちなんだ作品も多数展示されています。
ペーター・ベルンハルト・ヴィルヘルム・ハイネ(伝)《ペルリ提督横浜上陸の図》では、幕末の一大事件、ペリー来航が描かれています。きれいに整列した乗組員を従え、堂々とした姿のペリー。人々が動揺する様子も細やかに描かれています。
開国後、栄えていく横浜。そんな姿を描いた歌川貞秀《横浜商館真図》も。和装と洋装の人が入り交じる、貿易港らしい風景。よく見ると、英語&オランダ語のカタカナ表記された数字や単語も。ちょっとした教材の役割も担っていたのではないでしょうか。
開国に伴い開業した遊郭を描いた作品も。歌川貞秀《横浜本町幷に港崎町細見全図》では、濠と塀で囲まれた遊郭の姿が。他の町とは色彩も異なる華やかな世界に描かれています。
五姓田芳柳(伝)《外国人男性和装像》は、和服姿の人物が描かれた掛け軸。よく見るとその人物は日本人とは異なる顔つきをしています。このような絵は、当時日本を訪れる外国人の土産物として人気があったそう。そのためほとんどが海外にあり、国内に残っているものはかなりレアとのこと。
占領下の姿
松本竣介《Y市の橋》は、横浜市の月見橋を描いたシリーズ作品。1942年のものから複数展示されており、公布された金属回収令をはじめ、戦争によって町の風景が変わっていく様子を感じることができる作品群なのです。1946年にはどのような姿になっているか。それは現地にてご確認ください。
空襲により大きな被害を受けた横浜、戦後は占領軍に接収されていました。そんな様子を写した写真作品も多数展示されています。奥村泰宏《シューシャインボーイ》は、兵士の靴磨きをする少年を写した作品です。
赤線地帯で働く女性を多く写し、戦後の女性が置かれた状況を今に伝える作品を多く残した常盤とよ子。《待合室》は、いったい何の待合室なのか。おそらくここは夜の仕事をする人の集まる病院でしょう。
モダンアート
海外の近代美術も多数展示されています。シュルレアリスムの巨匠として知られるサルバドール・ダリ《ガラの測地学的肖像》。ロシア連邦タタールスタン共和国生まれのガラの後ろ姿を描いた作品。ダリの妻であり、優秀なマネージャーでもあったそうです。
パブロ・ピカソ《ひじかけ椅子で眠る女》は、顔のパーツがばらばらに散らばり、ひじかけ椅子かどうかもよくわからない、一見すると見る人を突き放すかのような作品。その一方で色彩のバランスは非常に穏やか。変に理解しようと肩肘張らなければ、妙に落ち着ける作品です。
ちなみにこの作品のモデルは、ピカソが街で声をかけ、恋人となったマリー・テレーズ・ワルテルであるそう。当時ワルテルは17歳、ピカソは45歳で妻子持ち・・・。
横浜美術館を代表する作品がルネ・マグリット《王様の美術館》。ルネの絵によく登場する山高帽の男が描かれています。体には奥に描かれるはずの風景が映し出され、顔のパーツが宙に浮かぶように置かれた不思議な作品。さらに不思議なタイトルは友人に決めさせたそうです。
現代美術
館内の一角で上映されているのはクリス・チョン・チャン・フイ《HEAVENHELL》。戦後、簡易宿泊所や売春宿が集まった黄金町。その空気を再現した作品。登場人物は全て執拗なカメラ目線。不安定な音楽と多数の視線で不穏な空気が漂う作品でした。
ジュン・グエン=ハツシバ《呼吸は自由 12,756.3:日本、希望と再生、1,789 km》は、ヨコハマトリエンナーレ2011にて発表された、GPSをつけて走った軌跡で地図上にドローイングが描かれていく作品。進んでいく軌跡は、まるで花が咲いたかのようです。
最後に登場するのが奈良美智《春少女》。ひと目で奈良美智とわかる、印象的な少女を描いた作品。2mほどのキャンパスであるため、なかなかインパクトがあります。ふんわりとした色彩とキラキラ輝く瞳が幻想的で吸い込まれそうです。
時代もジャンルも様々な作品をたっぷり見ることができてお腹いっぱい!展示室は広々としており、椅子も多く配置されているため、休憩しながらマイペースに楽しむことができました。
アクセスと営業情報
・みなとみらい線の「みなとみらい」駅より徒歩3分(マークイズ経由)
・JR京浜東北・根岸線、横浜市営地下鉄の「桜木町」駅から徒歩10分
開館時間 | 10:00~18:00 |
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休館日 | 木曜、年末年始 |
料金 | 展覧会によって異なる |
公式サイト | https://yokohama.art.museum/ |
※掲載の情報は2025年3月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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