立山の自然や地形、そして神秘的な信仰の歴史を知ることができる広大なミュージアム。科学的でありながらも、芸術性が高い展示が多く見ごたえ充分。遥望館で見ることができる映像作品は一見の価値アリ!
休館日:月曜、翌祝、年末年始
料金:展示館300円、遙望館100円、まんだら遊苑400円
立山博物館へのアクセス
電車の場合、富山地方鉄道立山線の千垣駅から徒歩30分(約2㎞)。千垣駅から町営バスもありますが、本数が少なく日曜定休と観光客には少々利用しにくいです。
車の場合、富山駅から約45分、立山ICから約30分ほど。
富山市街地や北陸自動車道から見ると、立山黒部アルペンルートの起点となる立山駅へ向かう途中にあります。「アルペンルートへ行こうと思ったけど天気が優れない・・・」そんなときの代替スポットとしてもぴったりです。
メインとなるのは3つの施設
立山博物館は複数の展示施設や重要文化財の家屋などが広い敷地に点在する、広域分散型の博物館。じっくり見て回ったら、1日過ごすことができる見どころの多いミュージアムです。
メインとなるのは文化や自然についての展示が楽しめる博物館「展示館」、大型映像ホール「遥望館」、立山曼荼羅の世界を体感できるアトラクション施設「まんだら遊苑」の3か所。
この3か所は展示館300円、遙望館100円、まんだら遊苑400円とそれぞれ入館料が必要となります。3施設セット券ならば650円とかなりリーズナブル。
もし3ヶ所巡る場合の所要時間ですが、さらっと見ても展示館30分・遙望館40分、まんだら遊苑40分ほどかかります。それぞれの移動も含めると2時間以上は見て置いた方が良いです。
※遙望館は上映スケジュールが決まっていまるため、それに合わせて順番を決めるのがおすすめです!(詳しくは後述します)
信仰と自然を知る『展示館』
立山博物館の中心となる施設。立山信仰や立山の自然について学ぶことができる博物館です。
美術館のような建築
博物館ときくと四角いコンクリートな建物をイメージしがちですが、この展示館はかなりアーティスティック。てっぺんがガラスのピラミッドやカーブを描く側面など、まるで美術館のような出で立ちです。
設計を担当したのは磯崎新(いそざきあらた)氏。水戸芸術館(茨城県)、ぐんま天文台(群馬県)、奈義町現代美術館(岡山県)などで知られる建築家です。
立山黒部アルペンルートの「雪の大谷」をイメージしたという吹き抜けの螺旋階段や立山連峰を現す幾何学模様のような窓枠など、館内のデザインも非常に凝っています。
立山の自然
順路に従いまずは3階の第1展示室へ。来館者を最初に出迎えるのはブナの森のジオラマ。
ブナは冬には葉を落とす冷温帯落葉広葉樹。広く茂る葉で水を蓄え、根で土をつかまえて土砂崩れを防ぐブナの森は、立山の豊かな自然を守っています。
また、かつてはお椀や杓子を作るための木材としても多く利用されていました。ジオラマの周りには、実際にブナを使用して制作された道具が並びます。
ブナの森に混ざるのは赤く紅葉したハウチワカエデ。そして、その枝に逆さにぶら下がっている鳥はエナガ。小さくて丸っこい、とてもかわいい野鳥です。
こちらは地獄谷の再現模型。硫黄でできた塔や熱湯が湧き上がる池が広がる地獄谷。この模型では実際に水が蓄えられており、ゴポゴポと煮立つ様子を見ることができます。
神秘の立山信仰
修験道に基づき、立山に登拝する修験者たち。ここでは、そんな修験者が身につけていた結袈裟や鈴懸、法螺貝などが展示されています。(※このコーナーのみ撮影禁止)
中でも印象的だったのは「うば尊像」に関する内容。かつて女人禁制であった立山、麓にあるうば堂までは女性の参詣が許されていました。そのうば堂に祀られるのがうば尊像。
このうば尊像は、おばあさんの姿をしています。おじいさんや若い女性の姿の像はよく見かけますが、おばあさんが信仰の対象というのはとても珍しいのではないでしょうか。山姥であるとも、開山である慈興上人の母ともいわれています。
いくつも並んだうば尊像は、全て白装束に身を包んでいます。よく見るとそれぞれ表情が大きく異なっており、穏やかな顔をしたものから般若や不動明王のような怖い顔のものまで多岐に渡ります。
謎の霊獣クタベ
館内のあちこちに潜む不思議なキャラクターを見つけました。ゆるキャラのようですが、その表情はどこか悲しげに見えます。
こちらは、クタベと呼ばれる立山の予言獣。山へ入る人の前に現れ、疫病を予言するそう。その際に「ワタシの姿を見れば、その悪い病から逃れられる。見ることのできない人々には、ワタシの絵を描いて知らせなさい」と伝えるらしい。
絵に描くことで災いを除けるという特徴はアマビエとも通じるものがあります。また、人の顔をした獣というルックスと予言をするというその特徴は、日本各地に伝説の残る妖怪・くだんと酷似しています。
時空を超えたストーリーに浸る『遥望館』
遥望館は映像作品を上映している施設。特に展示品などは無く、大きな上映室のみの映画館です。
上映時間に注意!
上映は1日5本。10:00/11:00/13:00/14:00/15:00と決まっているので、事前に何時の回を見るか考えておくのが良さそう。それに合わせて展示館やまんだら遊苑をめぐる順番を決めたり、滞在時間を調整するとスムーズです。
また上映時間は40分。なかなかの長さなので、ご留意ください。途中入室・退場は可能なようです。
駐車場は展示館orまんだら遊苑へ
遥望館に駐車場は無いため、展示館かまんだら遊苑から歩いていくことになります。
今回はまんだら遊苑近くの駐車場から歩いて向かったのですが、途中入口までの道がわかりにくくちょっと遠回りしてしまいました。こちらのバス転回場の奥へ進むと、入口までショートカットできます。
真っ赤な布橋が境界線
展示館サイドから向かうと、直前に真っ赤な橋が見えてきます。こちらは布橋といい、江戸時代にこの世とあの世の境目と考えられていた橋です。
立山は女人禁制とされていたため、女性はこの橋を渡ることで浄土往生が約束される「布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)」が行われていた場所でもあります。
ゆったりとした館内
大きな窓が並ぶ場内。通常時は立山連峰を見渡すことができますが、上映が始まるとスクリーンが下りてきて窓を塞ぐシステム。
椅子ではなく畳敷きとなっているのでリラックスした気分で映像作品を楽しむことができます
2つの映像作品
上映作品は、立山の自然を映し出した「立山1990」と立山曼荼羅の世界を独自の解釈で表現した「新立山曼荼羅絵図」。
特に新曼荼羅絵図がインパクト抜群!立山に存在する伝説や地獄、そして人類の未来に渡る壮大な世界を見ることができます。特撮やクレイアニメを駆使したSFな世界観は見応え充分。まるで異世界のよう地球の姿が描かれていますが実際にそうなる可能性もあるのかもしれません。
気になったので製作元を調べてみたところ、映画「ジュブナイル」や「ALWAYS 三丁目の夕日」など著名な作品の制作に携わっている制作会社・株式会社白組が手掛けているそう。
長くなりましたので、まんだら遊苑については次回にまとめます。
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