江戸時代の地震で姿を変えた立山カルデラ。それが原因で大雨が降るたびに土石流が下流へと流れてしまうことに。そんな大自然に対して戦い続けた「砂防」や立山の自然について学べるミュージアムです。
休館日:月曜、翌祝、年末年始
料金:400円
見学所要時間:30分程度 ※映像も含めると50分程
砂防博物館へのアクセス
立山カルデラ砂防博物館は、立山駅のすぐ近くにあります。
無料の駐車場がかなりの台数用意されていますが、立山黒部アルペンルートの利用客も多いため埋まりがち。停められなくなることは無さそうですが、かなり離れた駐車場になることもあるので時間には余裕を持っていくのが無難です。
私以外のお客さんは、登山着を身にまとった登山客ばかり。これから山へ登る人が電車の待ち時間に立ち寄ることが多い施設ではないでしょうか。
歴史を大きく変えた地震
全ての始まりは安政大地震。1850年代に日本各地で発生した多くの地震のことを指しますが、そのうち安政5年(1858年)の地震により立山連峰のトンビ岳が崩壊する鳶山崩れが発生します。それにより立山カルデラの形が変わり、いくつものせき止め湖ができあがりました。
その後、せき止め湖は崩壊。富山平野を飲み込む大洪水が発生します。平野一帯の家々を飲み込み、多くの犠牲者を出す大災害となりました。それ以降も大雨が降るたびに溜まった土砂は流れ、常願寺川は土石流を生む暴れ川へと姿を変えてしまいます。
たった一度の地震が原因で発生した土砂災害を防ぐための「砂防」は、現代にも続いています。この立山カルデラ砂防博物館では、そんな人々の150年以上も続く自然との戦いを伝えてくれるミュージアムです。
最初は映像がおすすめ
館内は、有料ゾーンと無料ゾーンに分かれています。無料ゾーンの展示も充実していますが、せっかくなので有料ゾーンも見ていくことにしました。
1階にある大型映像ホールでは、毎時00/30分に映像作品が上映されております。最初にここで映像コンテンツを見ておくと、館内の展示がとってもわかりやすく感じるので、上映時間に合わせて訪問するのがおすすめです。
上映作品は「崩れ」「立山カルデラ大地のドラマ」 「タイムトラベル常願寺川」の3つ。それぞれ上映時間は約20分ほどです。
今回見たのは「崩れ」。地震や土石流の様子を体感できる作品です。タイトルは幸田露伴の娘である作家・幸田文さんの作品にちなんでおり、劇中でも幸田文さんが全国の崩れが発生した山をめぐる様子が映し出されます。
土石流の力強さを知る
2階の立山カルデラ展示室には、六九谷展望台からの眺めを再現した大型変形ジオラマが。高さ2mもある大きな立体造形で、大鳶崩れと小鳶崩れの跡、そしてその下流に造られた堰堤(えんてい)を見ることができます。
このジオラマ、スイッチを押すと映像が壁に投影されます。激しい土石流を体感できる仕掛け付きでした。
こちらは「大場の大転石」の模型。直径6.5m・推定重量400トンといわれる巨大な石ですが、安政5年の洪水で流れてきたそう。こんな巨大な石が流れてくるなんて、考えただけでも恐ろしいです。
現代にも続く人々の戦い
2階のSABO展示室(無料)は、土砂災害を防ぐための「砂防」をテーマにした展示室。立山の砂防を支えてきたトロッコ列車は、車両それぞれが砂防の歴史を紹介する展示室になっています。
トロッコ列車は、急斜面を登るため折り返し運転を行うスイッチバックを繰り返し、砂防工事のための資材や作業員を運んでいました。
土砂災害を防ぐために砂防堰堤(さぼうえんてい)がいくつも造られましたが、その中でも最も巨大なのが白岩堰堤。高さ63m、落差108m、7段におよぶ巨体で、日本の砂防ダムの中でも最大の大きさを誇ります。
さらに、本宮砂防堰堤という砂防堰堤は貯砂量が日本一を誇ります。大きさ・貯砂量と2つの日本一を有するところからも、立山砂防が如何に大きな問題であったかを感じ取ることができます。
豊かな高原の自然
ライチョウをはじめとして野生動物や高山植物など、豊かな自然を誇る立山。ここでは、立山で見ることができる生き物を扱ったコーナーもあります。動物の剥製や昆虫標本が並んでおり、山に入る前に見ておくと気づきが増えそうです。
こちらは川へ急降下するヤマセミ。カワセミの仲間ですが、サイズは倍以上になります。白と黒のまだら模様が印象的です。
ヤマセミの横、木の枝にまとまった泡のかたまりは、モリアオガエルの卵。カエルといえば水中にゼリー状の卵を産むイメージがありますが、この種は泡状の卵を樹上に産み付けます。1匹のメスに複数のオスが集まり産卵・受精が行われます。
幻の湯・立山温泉
館内の展示で気になったのは立山温泉。「火山だし、温泉くらいはあるよなー。」と特に気せずさらっと流しかけたのですが、ちょっとした違和感が・・・立山温泉なんて名前の温泉ありましたっけ?
そう、立山温泉は現在では閉鎖されている温泉。かつては立山の登山客が多く利用しており、立山信仰の拠点として賑わいましたが、立山黒部アルペンルート開通に伴い温泉に立ち寄る登山客が減少、その後1969年の水害で登山道が通行止めとなり廃湯となりました。
館内で見かけた昭和初期の温泉を再現した模型。話し声が流れており、登山客や湯治客で賑わっていた様子が伝わってきます。
立山黒部アルペンルートは以前訪問したことがあり、なおかつ今日は天気が優れないため今回はパス。立山博物館&まんだら遊苑へ向かいます。
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