しょっぱくてスモーキーな歴史ミュージアム『たばこと塩の博物館』(墨田区・押上)

東京都(23区)

スカイツリーの近くに立つ、たばこと塩をテーマにした博物館。館内ではこの2つの品を、歴史から文化まで様々な切り口で紹介しています。ところで、なぜこの組み合わせなのでしょうか?

訪問日:2025/8/11(月) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

旧専売公社の博物館

たばこと塩の博物館は、1978年に「日本専売公社」によって開かれたミュージアム。もともとは渋谷にありましたが、老朽化などの理由で移転が決定。2015年に墨田区横川にてリニューアルオープンしました。現在はJTこと日本たばこ産業株式会社が管理・運営している企業博物館となっています。

気になるのは「たばこ」「塩」という不思議な組み合わせ。私もずっとなぜこの2つがテーマなのが気になっていましたが、どちらもこの博物館がオープンした時代には専売公社が扱っていた品目であったのです。

戦後1949年に発足したこの機関では、常習性・必需性が高い商品を独占的に生産・販売することで安定した税収を得ることができていました。他にも品質管理や過剰摂取の防止などの目的もあったそうです。

入り口に立つシンボルモニュメントは開館時に作られたもの。長いパイプをくわえた姿から、「喫煙の像」とも呼ばれています。スウェーデンのたばこ屋が看板としていた像を原型としており、オリジナルはストックホルムの博物館に展示されているそう。「野外博物館スカンセン」のことでしょうかね。

館内では2階が「塩の世界」、3階が「たばこの歴史と文化」とフロアが分かれて展示されています。まずは2階の塩からいきます!

塩にまつわる展示物

なぜ生物が塩を必要としているのか、その理由からスタート。「生命が海から地上に出るため、体の中に海をとりこんだ」そんな引き込まれるフレーズのもと、その理由が簡潔に語られます。

イスラエルの死海、アメリカデスバレーなど様々な地域の塩湖より採れた塩が展示されています。ウユニ塩湖の塩のブロックは自由に触ることが可能!ザラッとした見た目ですが、表面はつるつるでした。

巨大なポーランド岩塩。その重さは約1.4トンにも及びます。つるつるとした表面と重厚さは、まるで大理石のようです。ちなみに岩塩というのは、地殻変動などで陸に閉じ込められた海水が結晶化して堆積したもの。言うなれば「海水の化石」なのです。

こちらは聖キンガの像。モデルとなっているのは、ポーランド王に嫁ぎ、岩塩を発見したとされる人物。この彫刻、なんと岩塩をもとに造られた塩の彫刻なのです。

この像が安置されている聖キンガ礼拝堂は、ヴィエリチカという岩塩坑にあり、壁もシャンデリアも全てが岩塩でできた空間が広がっています。1978年には世界遺産にも指定されました。

伝統的な日本の塩づくり

面白いのが日本における塩づくりについて。岩塩や塩湖を持たず、雨が多いため天日製塩も難しい日本では、古代より火を使って海水を煮詰める製塩が行われきました。再現されているのは製塩のための釜屋。能登で使われていたものを移築復元したそう。

この釜屋で煮詰めるための濃縮海水「かん水」をつくるのが揚浜式塩田。汲んできた海水を砂が敷き詰められた塩田にまき散らし、日光で水分を飛ばします。海水がしみ込んだ砂を囲いに入れ、そこに海水を注ぐと砂についた塩分が溶けて6倍ほどの「かん水」が完成。これを先ほどの釜屋に運び、釜で煮詰めることで塩を作り上げます。この作業を行うことで、海水をそのまま煮詰めるよりも、燃料が1/6で済むのです。

こちらは入浜式塩田のジオラマ。さきほどの揚浜式塩田と似ていますが、こちらは人の手で海水を撒くのではなく、満潮を利用して海水を入れこむという塩田。労力は少ないですが、干満の潮位差が大きい地域でしか行えなく、主に瀬戸内海を中心に普及しました。

昭和に入ると、主流であった入浜式塩田にかわり導入されたのが流下式塩田。緩やかな斜面で水分を蒸発させ、さらに竹の枝などで組まれた「枝状架」とよばれる部分で風にあてて「かん水」を作るというもの。それまでの1/10の労力で済むようになります。

昭和47年には、電気の力を使ったイオン交換膜法が誕生。これが普及すると、塩田による製塩は終焉を迎えます。

大量生産が可能になった塩。日常でそんなに使うのかと思ったのですが、実際のところ食用はわずか15%ほど!残る85%の中でも、大部分を占めるのがナトリウムや塩素の化合物として使われるソーダ工業。ガラスやホーローの原料となったり、紙・アルミ・せっけんの製造に利用されたり、塩素として消毒や漂白剤に活用されたりと様々な用途があります。

たばこの歴史と多彩な喫煙具

エスカレーターで3階へ進むと、今度はたばこの歴史と文化エリア。最初に現れるのは、再現されたマヤ文明のパレンケ遺跡の十字の神殿

ここには葉巻をくわえた神様のレリーフが刻まれています。これが、現存するたばこに関する最古の資料。この頃はたばこの煙は、神と人間の間で祈りや神託を伝えるものであったそう。

ニコチアナ・ルスチカニコチアナ・タバカムという2種類の植物。名前からなんとなく想像がつきますが、たばこの原料となる植物です。タバコ属の植物は20種ほどありますが、たばことして利用されているのはこの2つだけであるそう。

ずらりと並ぶのは、様々なパイプ。小さな動物の細工が施されていたり、金属の装飾がされていたりと様々なデザイン。木材だけでなく、ガラスや巻き貝を利用したものもあり、そのバリエーションは豊か。

こちらの斧も喫煙具!トマホークパイプと呼ばれる、ネイティブアメリカンに伝わる道具です。パイプは、儀式や部族の主による会合の場にて欠かせないものであったそう。

日本のたばこ

再現された江戸のたばこ屋。妻がたばこの葉を巻き、夫がそれを刻むという夫婦営業の様子を見ることができます。江戸時代にたばこは日本各地で生産され、中でも大隅産の「国分」が高級たばことして知られていたそう。

展示室の一角には、たばこ店「業平たばこ店」もあります。一箱150円〜200円で販売しているところに時代を感じます。

展示室のラストに現れるのはたばこメディアウォール。9mはあるかという壁面のディスプレイに映し出されるのは、様々なたばこのパッケージ。Peace、HOPE、ハイライトなど今でも見かけるものもあります。

上部にはたばこのポスターも。キャビンの「俺の赤」、マイルドセブンの「白いベストセラー」など、キャッチコピーがインパクト抜群!たばこの広告なんて、令和の時代にはほとんど見かけませんよね。

というわけで、塩とたばこについてたっぷり学べるミュージアム。ミュージアムショップではボリビア、イタリア、インドネシアなど様々な国の塩、ジッポやキセルといった喫煙具、さらには葉巻も販売。館内にはしっかり喫煙室も備えていますので、たばこ展示を堪能したあとに一服していくのも良さそうです。

アクセスと営業情報

・都営浅草線の「本所吾妻橋駅」より徒歩約10分
・東武スカイツリーラインの「とうきょうスカイツリー駅」より徒歩約10分

開館時間 10:00~17:00
休館日 月曜、年末年始
料金 300円
公式サイト https://www.tabashio.jp/

※掲載の情報は2025年8月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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