娯楽文化から情報メディアまで幅広く印刷を学べるミュージアム『印刷博物館』(文京区・江戸川橋)

東京都(23区)

日本の総合印刷会社TOPPANによる企業博物館。印刷の技術だけでなく、時代と共に変化する印刷物が持つ役割まで網羅した見応えたっぷりなミュージアムです。

訪問日:2024/3/23(土) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

TOPPANの企業博物館

印刷博物館は、大日本印刷とともに国内の印刷業を支える「TOPPANホールディングス」が運営する博物館。予約不要で誰でも見学することができます。

文京区水道に建つ本社ビル内にあります。館内にはTOPPAN HALLというコンサートホールも備えており、クラシックの演奏会も行われているそう。

エスカレーターで地下へ進むと、受付が見えてきます。コインロッカーやミュージアムショップも備えており、かなり本格的なミュージアムの予感。わくわくしてきました。

印刷の偉大さを知るプロローグ

入館してすぐのプロローグと呼ばれるエリアには、歴史的な資料のレプリカがずらり。

「ハムラビ法典」「ヒエログリフ」「甲骨文字」・・・。いずれも教科書でみたものばかり。このあたりで、「あれ、印刷ってもしかしてものすごい技術では」という気持ちが高まってきました。

タイプライターや昭和の雑誌&ポスターなどの品々も。レトロ好きも楽しめる展示がたくさんあります。

わかりやすく楽しい展示

広々とした常設展示室では、日本や世界の印刷文化を幅広く紹介。書物や活字の展示に加えて、印刷がどのように活用されていったかが解説されており、非常に見ごたえがあります。

レンズ越しに見る江戸時代の「めがね絵」など、実際に体感できるコーナーも。映像を駆使したデジタルコンテンツも多数あり、わかりやすく工夫されています。

こちらは「活字パズル」。表示される言葉の活字ブロックをはめるというシンプルなゲームですが、鏡文字となっているので「さ」「ち」など区別がむずかしいケースも。進むと時間がどんどん短くなるため、なかなか難易度は高いです。

展示室内には、印刷工房もあります。こちらでは工房見学ツアーや活版印刷体験なども開催されているそうです。

日本の印刷文化の歴史

日本の最初の印刷物であり、制作年が明確である世界最古の現存印刷物といわれるのが「百万塔陀羅尼」。木製小塔に陀羅尼経を納めたものであり、その塔そのものと、そこに収められた陀羅尼経のレプリカが展示されています。藤原仲麻呂の乱を鎮圧した称徳天皇が、戦没者の冥福や国家の守護・安泰を祈りをつくらせたものであるそう。

仏教の普及とともに本格化していく印刷技術。鎌倉時代には寺院による出版物「五山版」などが発行、戦国時代には各地の大名が自国の文化や教育のために出版活動をはじめていきます。

江戸時代に入ると、文字ごとの版を制作して組み合わせる「活版印刷」が誕生。この「駿河版銅活字」は、そんな活版印刷に使用される活字のひとつ。将軍職を徳川秀忠に譲り、駿府へ移った家康が鋳造した活字です。

泰平の世が訪れる庶民文化の成熟に伴い、浮世絵、実用書などが多数印刷されていきます。各地に設置された藩校では教科書が印刷され、災害や事件を広く伝える瓦版も登場。情報メディアとしても発展していきます。

極小のマイクロブック

10mm以下という極小サイズの本を「マイクロブック」と呼びます。1964年の小倉百人一首にはじまり、マイクロブックの製作を続けているTOPPAN。館内のモニターでは、そんなマイクロブック完成までの様子を映像で見ることができます。極小でも読めるようにフォントを調整、書かれている絵や言葉もデザイン。最後の折込は、熟練の技術者によるアナログ作業によって仕上げられます。

そんなマイクロブックの実物も展示されています。

小さすぎてさっぱりわかりません!!!

この『四季の草花』という本は0.74mm ×0.75mmというマイクロブック。ギネス・ワールド・レコーズに認定されました。そんなわけで肉眼では全く読めません。展示では、拡大された本のページもあるので、内容が気になる方は、ぜひ現地にてご確認ください。

なお、販売時はルーペと「拡大本」もセットであったそう。拡大本といえと、2cmという小ささ。技術はもちろん、強い意思を感じる作品です。

無料なことが多い企業博物館ですが、ここは有料の施設。でも、展示内容はタイヘン充実しているので、まったく損した気分はありません。わかりやすく面白い内容で、じっくり読み進めていたら1時間半くらい滞在していました。

アクセスと営業情報

・東京メトロ有楽町線の「江戸川橋駅」4番出口より徒歩約8分
・JR総武線の「飯田橋駅」東口より徒歩約13分
・東京メトロ有楽町線、東西線、南北線、都営大江戸線の「飯田橋駅」B1出口より徒歩約13分
・東京メトロ丸ノ内線、南北線の「後楽園駅」1番出口より徒歩約10分

開館時間 10:00~18:00
休館日 月曜、年末年始、展示替え期間
料金 400円
公式サイト https://www.printing-museum.org/

※掲載の情報は2024年3月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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