幻想的な障屛画と風神雷神図屏風『建仁寺』(京都市東山区)

京都府

京都を代表する禅宗寺院。知らない人はいないであろう「風神雷神図屏風」や大迫力の「双龍図」など、様々な障屛画を拝観することができます。禅の精神がつまった3つの方丈庭園も見どころです。

訪問日:2025/3/31(月) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

京都五山に列する禅寺

臨済宗建仁寺派の大本山・建仁寺。その歴史は古く、創建は建仁2年(1202年)。鎌倉幕府の2代将軍・源頼家によって建立されました。開山は臨済宗の宗祖である栄西

室町時代には、足利氏によって定められた5つの禅宗寺院「京都五山」の第3位にも指定されます。新興勢力であった臨済宗を味方につけることで、当時強大な力を持っていた比叡山延暦寺などの旧勢力を抑える目的があったそうです。応仁の乱の戦火や火災によって焼失してしまうも、安国寺恵瓊が復興に尽力。江戸時代にも幕府の保護を受け、堂宇が修築されます。

清水寺や高台寺、八坂神社といった人気のスポットが集まる東山にあるため、境内はなかなか混雑!インバウンドにも人気なお寺です。

一直線に並ぶ伽藍配置

南から山門、法堂、方丈が一直線に並ぶ禅宗寺院らしい伽藍配置。境内入口は複数ありますが、南東にある駐車場そばの「北門」から入る人が多いです。

今回は東福寺のあとに訪問したので、南側から。そびえ立つ三門は大正12年(1923年)、静岡県の安寧寺から移建したもの。「御所を望む楼閣」という意味で「望闕楼(ぼうけつろう)」とも呼ばれています。

明和2年(1765年)に再建された法堂。堂内の天井には大迫力の「双龍図」が描かれているのですが、この絵については後ほど。

法堂の先にある本坊。ここが拝観受付となっております。ここで靴を脱いで、方丈庭園や襖絵を見に行きます!

禅の精神が詰まった庭園

方丈は慶長4年(1599年)、安国寺恵瓊が安芸(広島県)の安国寺から移築したもの。本尊の十一面観音菩薩像を安置しています。

方丈の前に広がる庭園「大雄苑」は、昭和初期頃、加藤熊吉により作庭されたもの。水を使用せずに水を表現した枯山水庭園。白砂に描かれた模様は波、配置された岩は島を表しているのでしょう。

この独特なデザインの窓は「花頭窓」といい、寺社建築で多く見られる装飾窓。この窓越しに庭園を眺めるのもおすすめです。

本坊の中庭にある庭園が「潮音庭」。廊下に囲まれているため、どこから見ても正面になるように作られています。立ち並ぶ木々や敷き詰められた苔は、先ほどの枯山水とはうって変わって、深い山を感じさせます。

「○△□乃庭」というユニークな名前の庭園もあります。平成18年(2006年)に北山安夫によって造られた庭であり、その名の通り〇△□によって構成されているとのこと。

私の予想では、木が植えられた苔山が○、奥の井戸が□。△は迷ったのですが、手前の白砂が描いている斜線部分のようです。案内によると禅宗の四大思想「地水火風」を、○=水、△=火、□=地で象徴しているとのこと。□が井戸なら「水」、〇が苔山なので「地」の方がしっくりきますが、もっと深い思想なのかもしれませんね。

境内を彩る障屛画

建仁寺の見どころといえば、襖絵や屏風などアート作品。方丈の拝観の流れで、様々な作品を見ることができます。

襖に描かれた「雲龍図」は海北友松の作品。大きな襖8枚に渡り描かれた2匹の龍は躍動感にあふれています。

スリッパを履いて、先ほど外観を見た法堂へ。特別拝観ならば、内部に入ることができます。天井に描かれているのは大迫力の「双龍図」。平成14年(2002年)に創建800年を記念して、小泉淳作により描かれたもの。縦11.4m、横15.7mという巨大な天井絵は、北海道の廃校となった小学校の体育館で描かれたそう。薄暗く静かな空間を舞う龍の姿は神秘的です。

染色画家・鳥羽美花が栄西禅師800年大遠諱事業の一環として平成26年(2014年)に制作した「舟出」。ブルーの色彩が鮮やかでモダンな作品です。眩しさすら感じる光の反射が美しく、また深い奥行きもポイントです。

ユーモラスな雰囲気の「唐子遊戯図(からこゆうぎず)」は、明治期の日本画家 ・田村月樵によって明治45年(1912年)に描かれたもの。筆を持ち、写仏しているかのような唐子(※中国の装いや髪型をした童子)たち。襖を飛び出したあとは、遊び戯れる姿も。

風神雷神図屏風

さて、最後に紹介するのがこちら。この屏風絵、きっと見たことある方も多いハズ!

こちらは江戸時代の画家・俵屋宗達の最高傑作と伝わる「風神雷神図屏風」。金箔の空を舞う風神と雷神は躍動感たっぷり。風神雷神の姿はもちろんのこと、その配置も魅力的。両サイドに置かれ中央が空いた構図は、さまざまな捉え方ができます。

なお、こちらは複製であり、実物は作品保護の観点から京都国立博物館に寄託されています。


方丈の拝観で30分ほど、山門や法堂外観の見学を含めても1時間かからないくらいでした。今回は時間の都合でまわれませんでしたが、開山堂や多数の塔頭寺院もあります。いずれまたじっくりと訪ねてみたい寺院です。

アクセスと参拝情報

京阪本線の「祇園四条」駅より徒歩7分
阪急京都線の「京都河原町」駅より徒歩10分

拝観時間 10:00~17:00
料金 800円
公式サイト https://www.kenninji.jp/

※掲載の情報は2025年3月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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