江戸から続くイヨボヤのストーリー『イヨボヤ会館』(村上市)

新潟県

日本で最初のイヨボヤ専門の博物館であるイヨボヤ会館。イヨボヤに関する歴史や文化を、映像や模型、さらには実物を通して学ぶことができます。ところで、イヨボヤってなんでしょうか?

訪問日:2024/5/5(日) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

イヨボヤの博物館

村上市を代表する観光スポット、イヨボヤ会館。まったく聞きなれない「イヨボヤ」、名前からはどんなスポットなのかまったく想像がつきません。

建物に掲げられたサカナから予想が立っているかもしれませんが、イヨボヤというのは村上の方言で「サケ」のこと。「イヨ」=魚(ウオ)がなまったものであり、「ボヤ」もまた魚を意味する言葉。「魚の中の魚」という意味があるそうです。

というわけで、現代的に言い換えるならば「サーモンミュージアム」。三面川(みおもてがわ)という、サケの遡上で知られる川の側に建っています。

入口では村上名物である「塩引き鮭」がお出迎え。2023年11月に干し上げた実物であるそうです。

順路を進むと、まずはサーモンシアターから。約13分の映像作品が随時流れています。三面川で生まれたサケが海へ出て、また帰ってくるというサイクルを映した実写映像。途中には漁法や祭などの文化も紹介されていました。

生態展示もたっぷり

ミニふ化場は、多数の水槽が並ぶ水族館。ギンブナ、ヤリタナゴ、小ぶりですがアカメも飼育されています。

黒いサカナはイバラトミヨ。水草で巣をつくり、そこに産卵する習性があります。生息域が減少している絶滅危惧種ですが、三面川の支流ではまだ見ることができるそう。

階段を降りた生態観察室にも水槽がたくさん。ニジマスやヤマメなど、中型の淡水魚が泳いでいます。

無数に泳ぐ小魚はサケの稚魚。三面川に遡上してしたサケを捕らえてここに放流、ここで産卵が行われ、その卵から孵化したものです。本来稚魚は三面川に放流されていますが、ここの稚魚は試験飼育のためこのまま飼育しているそうです。

武平治による種川の制

そのまま進むと青い壁と波のような天井の通路。ここはサーモンロードと呼ばれる、110mに及ぶ地下通路なのです。

その途中にあるのが青砥武平治記念コーナー。村上におけるサケ文化の礎を築いた村上藩士・青砥武平治(あおと ぶへいじ)を紹介するコーナーです。

当時、村上藩の重要な資源であったサケ。しかし乱獲によって漁獲量はほぼゼロという危機を迎えます。

そこで武平治は「サケは生まれた川に戻る」という回帰性に着目。遡上する三面川を本流と分流に分け、分流をサケが産卵しやすい環境である「種川」として整備。サケの自然ふ化増殖「種川の制」を作り上げます。

この種川の制が出来るまでのストーリーを描いた約7分のアニメ映像も上映中。歴史と功績に加えて、反対や密猟などの苦難も交えて、分かりやすく知ることができます。

リアルな川を覗く観察室

地下通路を抜けた先にあるのは、全長50m・幅8mの三面川鮭観察自然館

武平治が作り上げた三面川の分流「種川」に10カ所の観察窓が設置されており、生息する生物を自然のままに観察できます。

秋には遡上するサケの群れや、タイミングが合えば神秘的な産卵シーンを観察できるそう。春先だったのでサカナはいないかと思いきや、魚群が!タイミング的に水が濁っているため良く見えませんが、ウグイでしょうかね・・・?他にも川底にはマハゼやウキゴリの姿も見ることができました。

伝統的なイヨボヤ漁業

サーモンロードを戻り、最後の展示室で見ることができるのが、三面川のサケ漁について。ここでは様々な漁法や漁具を紹介しています。

この小屋は番小屋。サケの漁期中、「種川の制」に反対する人々の密猟や設備破壊を監視するためのものです。

「居繰網漁(いぐりあみりょう)」という3隻一組で行う漁法に使用されている川舟。2隻が網を張り、もう1隻がそこにサケを追い込むという漁法です。

こちらのカギは「てんから漁」の道具。釣り竿の先にこのカギを付け、川底に沈めておき、サケが糸にふれた瞬間に素早く合わせて引っ掛けるという漁法。

ちなみにこの「居繰網漁」「てんから漁」は、入り口にあったサーモンシアターで実際の映像を見ることができます。最初に見ておくと、「これがあの道具か・・・!」となってちょっぴり解像度が上がります。

生きているサカナを見ることができる水族館的な楽しみ方に加えて、地域に根差したサケの文化をたっぷりと楽しむことができました。せっかく覚えたからには「イヨボヤ」という単語、ぜひ使ってみたいのですが、どれくらいの人に伝わるのか気になるところ。新潟県民でも知らない人が多い気がしますね。

アクセスと営業情報

村上駅から徒歩20分ほど。近くにある「おしゃぎり会館」「若林家住宅」「村上歴史文化館」との4館セット券もあるので、あわせての訪問もおすすめです。

開館時間 9:00~16:30
休館日 年末年始
料金 600円
公式サイト https://www.iyoboya.jp/

※掲載の情報は2024年5月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

コメント

  1. […] イヨボヤ会館に続いて訪れたのがおしゃぎり会館。「イヨボヤ」も何かわかりませんでしたが、「おしゃぎり」もなんだかさっぱりわかりません。 […]

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