都会の中心に残る天然の山、愛宕山。江戸のはじまり頃から愛宕神社が建立され、信仰の地としても知られています。立ちはだかる「出世の石段」の先にある境内は、木々が生い茂る憩いの場となっています。
都内の最高峰・愛宕山
天然の山として東京23区内で最高峰の愛宕山。江戸時代には町を一望できる景勝地として知られており、月見の名所でもありました。
幕末の「桜田門外の変」では水戸浪士たちの集結の地であり、終戦時には降伏に反対する尊攘同志会が籠城した「愛宕山事件」が起こったりと、激動の歴史にも関わるランドマーク。さらにNHKの前身の一つである東京放送局があったことから「NHK発祥の地」と呼ばれており、その跡地は「NHK放送博物館」となっています。
そんな標高25.7mの山頂には愛宕神社が鎮座しています。
周辺はすっかり高いビルに囲まれているため最高峰といった雰囲気はあまり感じとれませんが、多くの自然が残る姿から山である威厳は感じとれます。
立ちはだかる出世の石段
参拝客を出迎えるのはこの石段!
段数は86段とそれほど多いわけではありませんが、その傾斜は約37度。まるで立ちはだかる壁のような迫力があります。
毎日上り下りしたらものすごく鍛えられそうですが、ランニングやトレーニングは禁止となっています。
この壁のような石段は出世の石段と呼ばれています。いったいどのようなエピソードがあるのでしょうか?このお話は後ほど。
火伏の神を祀る神社
石段を上った先には丹塗りの門。ここを抜けるとすぐに拝殿が見えてきます。
この神社の創建は1603年。徳川家康が江戸幕府を開くにあたり、防火の神様として祀られたものです。その後火災により焼失してしまいますが、1877年に再建。続く関東大震災と空襲により再度焼失。現在の社殿は1958年に建立されたものです。
主祭神は火産霊命(ほむすびのみこと)。「カグツチ」とも呼ばれる炎の神様であり、防火・防災、さらには印刷・コンピューター関係、商売繁盛、恋愛・縁結びなどのご利益があります。
境内には開拓・旅行などの守護神とされる天狗を祀る「太郎坊神社」、衣食住、農工商の神様である「福寿稲荷社」、福徳、善心、知恵を授けてくれる「恵比寿大黒社」などの境内社が並んでいます。こちらも境内整備工事の影響で、囲いから遥拝するかたちとなっていました。
出世のエピソード
さてさて、ここで先ほどの出世の階段にまつわるエピソードを紹介させていただきますね。
そんな中、ただ1人だけ名乗り出た騎馬がおり、果敢に石段を登り始めました。その男の名は曲垣平九郎。無事馬に乗ったまま石段を上り、梅の枝を採ってくることに成功しました。
家光は「泰平の世に馬術を怠らないとはあっぱれ」と賞賛。平九郎は馬術の名人として全国にその名を轟かせます。
境内には「将軍梅」という梅の木が植えられています。この梅の木こそが、平九郎が献上した梅であるそう。実物があると、急にリアリティが増してきますね。
謎の石像・招き石
境内を散策していると、目についたのは社殿の傍に置かれたこちらの石像。
彫刻作品のようにも見えますが、自然にできたカタチのようでもあります。見る角度によってはネコやイヌに見えなくもない、とっても不思議な石像です。
この石は「招き石」。撫でると福が身につくとの記載がありますが、由緒などは不明。近くに建てられた札には奉納者の名前が書かれておりますが、詳しいことはわかりませんでした。
今回訪問した際は社務所がクローズしていたので尋ねることができませんでしたが、いずれまた再訪して聞いてみたいと思います!
アクセスと参拝情報
・東京メトロ日比谷線の「神谷町駅」より徒歩5分
・東京メトロ日比谷線の「虎ノ門ヒルズ駅」より徒歩5分
・東京メトロ銀座線の「虎ノ門駅」より徒歩8分
・都営三田線の「御成門駅」より徒歩8分
愛宕山エレベーターを利用すると、「出世の石段」を上らずに社殿までアクセスすることができます。
開門時間 | 境内自由 ※社務所は9:00~16:00 |
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公式サイト | https://www.atago-jinja.com/ |
※掲載の情報は2023年8月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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