日蓮宗の大本山として多くの人の信仰を集める巨刹。独特の赤色が映える五重塔と宝塔は、東京において江戸時代の建築を感じることができる貴重な伽藍。境内ではお寺の名前を冠したホンモンジゴケという苔を観察することもできます。
日蓮宗の大本山
池上本門寺は日蓮宗の寺院。七大本山の1つにも数えられている、格式の高いお寺です。
晩年の日蓮は病を患っており、湯治のために身延(山梨県)から常陸(茨城県)へ向かいます。しかし、この池上に着いたところで衰弱が進み、それ以上の旅は断念。多くの弟子に見守られながら入滅を迎えることとなりました。
その地を霊跡として建立されたのが、この池上本門寺。多くの人に信仰されている寺院で、最寄り駅の池上本門寺駅を通る東急池上線も、この寺院の参拝客を輸送するために開業しています。
石段を登って境内へ
立ちはだかるのは此経難持坂(しきょうなんじざか)。東京のお寺は平坦な土地に造られていることが多いのですが、この池上本門寺は丘の上にあるため石段を登る必要があります。
この石段は戦国武将の加藤清正が寄進したものといわれており、その段数は96段に及びます。お寺の石段は、多くの場合その数に意味があることが多いです。この96という数字は、法華経宝塔品の偈文(げぶん)96文字に由来しているそう。
石段を登った先には立派な仁王門。2体の仁王像が左右から睨みをきかせています。かつてはアントニオ猪木をモデルにした仁王像が安置されていたそうです。
迫力ある大殿
仁王門の先には重厚な大殿。祖師である日蓮を祀っているお堂で、大きな瓦屋根が印象的。火災や戦災によって何度も焼失しており、現在のお堂は1964年に再建されたもの。鉄筋コンクリートによって造られており、その高さは27mにも及ぶ迫力ある伽藍です。
江戸時代もその大きさから「池上の大堂」と呼ばれていたそう。これに対して上野の寛永寺は「中堂」、芝の増上寺は「小堂」と呼ばれていたそうで、それだけこの大殿が巨大であったことを物語っています。(※池上本門寺の公式HP参照)
正面から見ると巨大な瓦屋根ばかりに目が行ってしまいますが、側面から見ると印象が変わります。金色の装飾がキラキラと輝いており、なんともあざやか。
江戸から残る五重塔
江戸幕府2代将軍・徳川秀忠によって建てられた立派な五重塔。高さは29.37m。一〜二層の屋根は瓦葺きですが、三〜五層は銅板葺きとなっています。これは軽量化を図るためといわれています。
池上本門寺の多くの伽藍は、第二次世界大戦時の空襲によって焼失してしまいますが、こちらの五重塔は焼け残った建築物。江戸初期の建築で、関東の五重塔の中でも最古と言われています。「ベンガラ」という赤い顔料で塗られており、独特な渋みのある赤色をしています。
五重塔から南に約50mほどのところにある大田区立池上会館の屋上展望台から見ると、森の中にそびえる風流な姿を写真に撮ることができます。この写真を見て東京だと気づく人はなかなか少ないのではないでしょうか。
また、この展望台は常時開門しているため、夕暮れや夜景も楽しむことができます。
木々に包まれた宝塔
大殿からさらに奥へ進み階段を降りていくと、木立とお墓に囲まれてそびえる宝塔があります。多くの参拝者でにぎわっていた大殿周辺に比べると、静かで張り詰めた空気が流れています。
高さは17.5mとかなりの大きさ。赤漆で塗られた姿は独特のツヤが出ており木々の緑とのコントラストが鮮やか。怖いほどの存在感に酔ってしまいそう。
この宝塔は日蓮の荼毘所(火葬場)に建てられたもの。江戸後期の建築で、五重塔と同様に戦災を免れた伽藍。重要文化財にも指定されています。圧巻は、屋根の下の組物。赤青緑の3色に彩られており、そこから無数の龍が顔を覗かせています。
ホンモンジゴケ
池上本門寺に来たら、ちょっとだけ目を向けて欲しいのがコケ。池上本門寺で発見されたためその名を冠した「ホンモンジゴケ」という種類のコケを見ることができるのです。
ホンモンジゴケがあるのは五重塔の石垣。この苔は銅を含んだ水を好むという変わった生態を持っております。前述の通り五重塔は上層部の屋根が銅葺きなので、そこから銅を含む雨水が流れてきているのです。
少々ひび割れていますが、モスグリーンがあざやか。雨の日の翌日に来ると、もっとあざやかな緑色を拝むことができそうです。
五重塔のまわりを一周回ってみたのですが、北側が多く、西と東はわずか、南はほぼゼロでした。太陽がよく当たる南は育ちにくいのでしょうね。
アクセスと営業情報
東急池上線の池上本門寺駅から徒歩10分ほど。都営浅草線の西馬込駅からも徒歩12分ほどでアクセスできますが、こちらは裏手側からの訪問になります。
また、JR線の大森駅からバスも出ています。20分ほどの《本門寺前》下車、そこから徒歩5分ほどでもアクセスできます。
夜間でも開門しているようですが、案内所などは16:00、大殿は17:00に閉門となっていました。
開門時間 | 境内自由 |
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料金 | 無料 |
公式サイト | https://honmonji.jp/ |
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