かつて安土城の城下町として栄えており、歴史ある町並みが残る近江八幡。その中には、いくつかレトロな洋風建築も混じっています。「ヴォーリズ建築」と呼ばれるそれらは、上手く町中に溶け込んでいます。
ヴォーリズとは
ヴォーリズというのは、ウィリアム・メレル・ヴォーリズのこと。アメリカのカンザス州に生まれた彼は、明治時代の終わりに単身来日。滋賀県立商業高校の英語教師を務めます。
熱心なキリスト教徒でもあった彼は、その施設の建設をきっかけに建築家として活動をはじめ建築設計監督事務所を開きます。
また、ヴォーリズ合名会社を設立。アメリカ帰国時に出会ったメンソレータム社の創業者アルバート・アレキサンダー・ハイドとの縁から、日本でのメンソレータム販売代理店となります。
その後も近江療養院(現ヴォーリズ記念病院)や、近江兄弟社学園(源ヴォーリズ学園)など、様々な施設を開設します。さらに、終戦後、マッカーサーと近衛文麿の仲を取り持ったり、70年代音楽ではおなじみの電子式のオルガン「ハモンドオルガン」を日本に紹介したりと、その活躍は非常に多岐に渡る魅力的な人物です。
街にとけこむ洋館
そんなヴォーリズが手掛けた西洋建築は全国各地に存在していますが、彼の拠点であった近江八幡には特に多く残っております。
近江八幡市は観光資源として保存・復元につとめており、ヴォーリズ建築めぐりを楽しむことができます。範囲は広いですが、徒歩で回ることができるのも多い。
今回は、近江八幡の街中のコインパーキングに車を停めて、1時間ほど街歩きしながらめぐってみました。
旧八幡郵便局
大正時代となる1921年に建てられた郵便局。1960年に役目を終え、長らく使用されていませんでしたが、2004年に復元されました。
町の中心にあり、ヴォーリズ建築めぐりの拠点とも呼べる施設。内部見学も可能となっており、ヴォーリズに関する展示や、ヴォーリズ建築マップなどもあるため、最初に訪問するのにおすすめです。コーヒー屋さんもあります。
休館日:火曜
アンドリュース記念館
入母屋造りに瓦屋根という、住宅スタイルの建物。ヴォーリズの親友であるハーバート・アンドリュースがこの世を去った後、彼の家から送られた資金と、ヴォーリズ自身の財産を投じて作り上げたメモリアルな建築物です。
2階ではナッツやドライフルーツ、スムージーを扱うカフェ「Going-Nuts! 」が営業しております。そのため、玄関、階段、2階までは見学自由。それ以外の部屋は、春と秋の期間限定で、有料にて特別公開されているそうです。
旧近江兄弟社地塩寮(※内部見学不可)
アンドリュース記念館のすぐ向かいにあるヴォーリズ建築。デザインもアンドリュース記念館にとても似ています。
ここは近江兄弟社(旧ヴォーリズ合名会社)の独身社員専用の宿舎であった施設。地塩というネーミングは、「あなたがたは地の塩である」という聖書の一節に基づいているそう。
なお、京都大学にも地塩寮があります。こちらもヴォーリズ建築物であり、現在も現役の学生寮として利用されているようです。
ヴォーリズ記念館
板張りで瓦屋根は和風ですが、煙突やレンガが洋風ともとれる不思議な邸宅。くっきりとした白い窓枠がおしゃれです。
ここは、ヴォーリズが暮らしていた住宅。内部は、彼についての資料や遺品が並ぶ資料館となっており、予約すれば見学も可能です。
休館日:月曜・祝日
ハイド館(※内部見学不可)
クリーム色の壁とにこげ茶色の板張りが映える、シックな洋館。メンソレータム創業者であるアルバート・アレキサンダー・ハイドの夫人から頂いた寄付をもとに作り上げた建築です。
ヴォーリズ学園内にあり、学園の創立者であるヴォーリズと、その婦人である一柳満喜子(ひとつやなぎ まきこ)の写真やゆかりの品が展示されています。
かつては幼稚園としても利用されてきましたが、現在では吹奏楽部の練習部屋としても利用されているそうです。
料金:無料
休館日:土日祝
今回めぐったのは、ヴォーリズ建築のほんの一部。さらに、近江八幡だけでなく、東京や京都にも多く存在しています。今後は観光ついでに少しずつ探してみようと思います!
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