日本各地の伝統的な人形を集めた人形ミュージアム。注目すべきは「伏見人形」「御所人形」「嵯峨人形」「賀茂人形」といった京都の人形たち。人形そのものの精巧な仕上がりはもちろん、歴史やそこに込められた思いも感じながら鑑賞すると、また見え方が変わってきます。
嵯峨野の人形博物館
嵯峨野の地に建つ博物館さがの人形の家は、その名の通り人形を集めたミュージアム。
このあたりは、「嵯峨鳥居本伝統的建造物群保存地区」という、古い家屋が残された地域。そんな空気に馴染む茅葺きの門が趣深い佇まいです。

気難しい人が運営してそうという勝手なイメージを抱いていましたが、受付のおじさんはとっても親切。

なお、この施設には冷房がありません!窓が空いており扇風機も回っているため灼熱というわけではありませんが、涼めるスポットではないのでご注意を。
ユーモラスなからくり
まずはおじさんによるからくり人形のレクチャーからスタート。説明とともに、人形を動かして見せてくれます。この「段返り人形」は、水銀の重心移動によって、階段をひっくり返りながら降りてきます。

「自動噴水器」は、下部のひょうたん型の部分をひっくりかえすと、15分ほど噴水が噴き上がります。ポンプなどの動力は何もないのに不思議です。

インパクト抜群なのは「神戸ドール」。明治の初めに外国人相手に販売された木彫りのからくり人形で、そのアクションはなかなか刺激的。腕がぎゅいーーーんと飛び出したり、首がみょーーーーんと伸び上がったり。変な擬音で書いてしまいましたが、実物を見ればこの表現が伝わるはずです!

人形たっぷりの展示室
ここからは展示室の自由見学へ。一階ホールは、全国各地の郷土人形コレクションがずらり。北海道のアイヌ民芸品、東京の今戸人形、長崎の古賀人形、徳島の阿波人形浄瑠璃など全国各地の人形が並びます。

二階常設展示室もまた日本各地から集った特徴のある郷土人形が。常時約8,000点と、多種多様な人形がびっしりと並んでいます。

人形たちは、説明があるものも、ないものも。「せめて5分間位ぼんやりして私を見て下さい。」なんてメッセージが添えられているものもありました。

バラエティ豊かな伏見人形
多数の人形の中で、特に多いのが伏見人形。全国の土人形の原点といわれる人形です。

関ヶ原の戦いに敗れた宇喜多秀家の家臣・鵤幸右衛門が京都で作り始めた、または伏見城建築の際に集められた瓦職人によって始められたといわれる人形。その後、伏見稲荷大社に参拝に訪れる人の土産品として有名になっていったそう。
太夫、神様、犬など、そのデザインは多種多様。7つの福が描かれた「七福富士」なんて縁起の良いものも。

代表と言われるのが「まんじゅう食い」。ある人が子供に父と母どちらが好きか問うと、子はまんじゅうを2つに割り「このまんじゅうのようにどちらも同じです」と答えます。賢明な子に育つまじない、また子授けのまじないとして人気が出ていった題材であるそう。

上品な伝統工芸の京人形
なんとなく見たことあるような子供の人形。こちらは御所人形という、都の公家の間で好まれた幼い子どもの人形。主に男の子の裸姿が多く、「三頭身であることと、透き通るような白い肌」といった特徴があります。子どもの健やかな成長や幸福を祈る象徴であったそう。

嵯峨人形は、木彫りに彩色をほどこした人形。江戸中期から幕末頃まで、嵯峨にて作られていました。金彩を加えて豪華絢爛な仕上がりですが、御所人形よりも写実的な人形です。

木材を彫った人形に、縮緬や金襴を被せた鮮やかな賀茂人形。江戸時代の元文年間(1736年~1741年)に、上賀茂神社に仕えていた高橋忠重という人物が作った人形がはじまりであるそう。そんなルーツから、神職や舞の様子などが表現されることが多く、宗教色が強い人形です。

衣装人形は、その名の通り実際に衣裳を着た鑑賞用の人形。雛人形・五月 人形・市松人形なども衣装人形の一種ですが、特に衣装人形と呼ぶ場合はこれらを除いた人形を指すことが多いそうです。

一見すると同じように見えてしまう人形ですが、このようにそれぞれルーツや役割が異なっています。知識を増やしていくと、一気に見え方が変わってくるので、ここに来たら人形について詳しく学んでみるのがおすすめです!
一通り見学を終えたので出口へ。土曜日の昼間の訪問でしたが、お客さんは私のみでした。オーバーツーリズムが叫ばれる近年の京都ですが、ここは静かでじっくりと楽しむことができます。
出口に置かれているのは手回しオルガン。レバーを回すと軽快な音楽が鳴り響きます。回す速度によってBPM調整ができて、なかなか面白かったです!

アクセスと営業情報
・JR嵯峨野線の「嵯峨嵐山駅」より徒歩約20分。
・京福電鉄 嵐山線の「嵐電嵐山駅」より徒歩約20分。
・阪急電車 嵐山線の「阪急嵐山駅」より徒歩約25分
| 開館時間 | 11:00~17:00 |
|---|---|
| 休館日 | 2025年12月24日~2026年2月13日 |
| 料金 | 1,500円 |
| 公式サイト | https://sagano.or.jp/ |
※掲載の情報は2025年9月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。


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