保戸島(ほとじま)ラストの記事は、港付近の集落散策から。狭く複雑で迷宮のような道は、歩いているだけでも冒険気分。そのまま日本一狭い県道を抜けてカモンバイまで行ってきました。
迷路のような急斜面集落
前回の記事で紹介した埋立地の集落は3階建ての建物がずらりと並ぶ整った姿でしたが、港付近の集落は急斜面の土地にあわせて入り組んだ複雑な姿。
公道なのか私道なのかもよくわからない細道や階段が次々と現れます。まるでエッシャーの騙し絵の世界に入り込んだような不思議な気分で、冒険心がくすぐられます。
Googleマップでも道が表示されていませんので、港のウォーキングマップだけが頼り。見晴らしは良いかと思いきや、家屋ひとつひとつの背が高いので、周囲はあまり見渡せません。傾斜でなんとなくの方角はわかりますが、これは迷います。
さまよっている中で見つけたのは壁が崩れてしまっている家。窓からは、海に続くカモンバイが見えます。まるで絵画のような光景に目を奪われます。
立ち並ぶ家々も、複雑な地形に合わせた不思議な姿。斜面にあわせて多数の出入り口があったり、細い階段があったりと、迷宮感を引き立てます。
よく見ると、どの家も壁にマンホールが埋まっています。これについては島の人から話しを聞いていないので想像ですが、島には下水設備が見当たらないためトイレ汲み取り用ではないでしょうか。
集落に溶け込む寺院
集落を進んでいると、見えてきたのは法照寺というお寺。浄土真宗本願寺派の寺院で、お堂の前には笠を被った親鸞の像が置かれています。
その先に進むとあるのが海徳寺。こちらは浄土宗の寺院で、街を見渡す高台に建立されています。
お堂の前は広々とした開放的なテラス。港もよく見渡せる、展望台のような雰囲気。吹き抜ける風が心地良いです。
海徳寺の隣には龍神宮があります。社殿の内部には御神体の鏡と、金色の龍、そしてなぜか信楽焼のタヌキが置かれています。
漁業に依存してきた島の人が、海への感謝、魚類の供養、豊漁を祈願して1747年に建立したという魚鱗塔。よく見ると右側にも供養塔が建っていますが、年号などは確認できないようです。
海徳寺からさらに登った先にある大師堂。弘法大師像を安置したお堂であり、お線香のかおりとロウソク風のライトが幻想的。
アーケード風なストリート
急斜面集落を出て、港の南側へと進みます。そこは商店街の路地裏みたいな集落。脇道のような雰囲気ですが、ここがメインストリート。
アーケードがあるわけではありませんが、お店や家の軒が延びて重なり合っているので、多少の雨が降っても濡れません。
食料品や日用品などを扱う商店も見つけました。
なんと、床屋を発見!赤・青・白の3色のあれがくるくるとまわっています。
カモンバイと観音像
ストリートを抜けて少し歩くと、島の南側の港が見えてきました。ここは夏には海水浴もできるそうです。
堤防を進んだ先にある小島がカモンバイ。近づいて来た人を胸で圧迫して息の根を止めるという恐ろしい妖怪「チチドッコイショ」が棲みついているという伝説があるそう。名前もその生態もインパクトありすぎませんか・・・?
マツバギクの群落があり、4〜6月に訪れると華やかな姿で出迎えてくれます。
カモンバイの反対側の堤防を進むと、中ノ島観音があります。白い石造りの観音像が安置されています。
この観音像、よく見ると、亀の甲羅の上に立っています。ちょっとわかりにくいため初見では気が付きにくいですが、じっくり見てみると亀の甲羅が見えてきますよ。
日本一狭い県道
さて、見たいところは一通り見終えたので港に戻ろう。そう思ったときに、ふと「保戸島には日本一狭い県道がある」という情報を思い出しました。
カモンバイから港への帰りに再び商店街を通ると、その表示を見つけることができました。
ここは「大分県道612号線」。Wikipediaによると「開通部分の全長は256m、幅は1.2m – 1.8m」であるそう。
県道の広さなんて今まで一度も気にしたことありませんでしたが、確かにこれが県道と言われると「細い!」という気がしてきます。
この表示がされたのは2014年頃とのこと。島の人もそれまで県道だったなんて知らず、驚いたそうです。
さて、散策を終えて港に戻ってきたのは9:20頃。港→埋立地集落→石鎚神社→加茂神社→急斜面集落→海徳寺→商店→カモンバイといったコースでざっくり2時間くらいでした。
船の寄港に合わせてにぎわう港。島の人たちはみんな大きな声でよく喋る印象。ただし、島の人同士の会話は方言が強くてあんまり聞き取れません。
帰りは「ニューやま2号」。風が出てきたのでけっこう揺れました。そんなときは、「神様のおさがり」でもらった黒糖キャンディの出番です。
とうことで、3本にわたる保戸島の記事もこれでおしまい。写真を振り返ってみると、埋立地も急斜面もとにかく集落が魅力的な島で、もっとじっくり散策しても良かったなと思います。フレンドリーな島の人たちともまたお話したいので、いつの日かぜひ再訪したいところです。
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