日本では珍しい儒教の寺院である孔子廟。装飾はひかえめてあるため一見すると地味ですが、洗練された配色とデザインがシックでとてもカッコいい建築です。屋根の上をよく見ると、聖堂を守護する幻獣の姿が・・・!
学問の聖地である儒教寺院
JR御茶ノ水駅から聖橋を渡ったすぐ先にある湯島聖堂。見た目は神社や仏教寺院のような雰囲気ですが、ここはそれとは異なる儒教の寺院。創始者である孔子をまつる、孔子廟なのです。
江戸時代の儒学者である林羅山が上野に建てた孔子廟を、5代将軍・徳川綱吉がこの地に移転。聖堂という名に改めました。
その後、幕府直轄の学問所である昌平坂学問所となったことから、「日本の学校教育発祥の地」とも伝えられています。湯島天神と並び、合格祈願に訪れる受験生も多いそうです。
明治時代に入り昌平坂学問所が閉鎖すると、「東京師範学校」と「東京女子師範学校」が設置されます。この2つは、現在の「筑波大学」と「お茶の水女子大学」へ。さらにその敷地の多くは「東京医科歯科大学」にもなっております。多くのキャンパスが並ぶ御茶ノ水エリア、そのルーツはここにあったのですね。
荘厳なる大成殿
杏壇門をくぐった先は回廊に囲まれた広場。奥に建つのが大成殿という、正殿にあたる建築。緑青の屋根と、真っ黒く塗られた壁とのコントラストがとてもクールです。
土日祝日限定ですが、200円にて内部の見学も可能。黒で統一された柱や壁に、赤や金の装飾が映えます。
堂内の中央に孔子像、左右には孟子・顔子・曽子・子思の四賢像が安置され、荘厳な雰囲気が漂います。
教えを学ぶ「宥坐之器」
大成殿の中に置かれたこちら、水が張られた台の上には、ツボのようなものが吊るされています。
こちらは宥坐之器(ゆうざのき)と呼ばれる道具。「虚なればすなわち傾き、中なればすなわち正しく、満つればすなわち覆る」とのこと。いったいどういうことでしょうか?
ここでは、それを実際に体験することができます。水をすくって注ぐと、傾いていたツボが次第にまっすぐになっていきます。さらに水を注ぎ続けると、やがて傾いて水がこぼれてしまうのです。
これは孔子による「満ちて覆らない者はいない」という教えを伝えるためのもの。満ち足りること、無理をすることを戒め、常に謙譲の心を忘れないように、という意味が込められているそうです。
屋根に潜む幻獣
屋根の上を見ると、シャチホコのようなもの、そしてシーサーのようなトラのような像が置かれています。
大成殿の内部では、この2体についての展示も見ることができます。
シャチホコみたいな方は「鬼犾頭(きぎんとう)」という龍の顔したお魚。想像上の神魚で、水の神として火災を防ぐために設置されているそう。
こちらは「鬼龍子(きりゅうし)」。同じく想像上の霊獣で、孔子のような聖人の徳に感じて現れるとのことです。
この幻獣の並び・・・設計者はもしかしてと思い調べてみると、やはり幻獣使いの伊東忠太氏の設計。「築地本願寺」や「一橋大学兼松講堂」など、彼の手掛けた建築では随所に動物や幻獣が隠されています。
世界最大の孔子像
大成殿から下って行くと、斯文会館という建物があります。そのすぐ側、木々に包まれるようにそびえ立っているのは孔子像。
写真では伝わりにくいですが、かなり大きなもの。その高さは4.57mにも及びます。
この像は中華民国台北市のライオンズ・クラブから、1975年に寄贈されたもの。孔子の銅像としては世界最大であるそうです。
すぐ近くの神田明神とは対照的な、静かでシックな雰囲気の湯島聖堂。大成殿内部以外は無料で見学することができますので、何か考え事をしたいときなどにふらっと訪れるの良さそうな場所です。
そういえば、御茶ノ水駅前にある聖橋。こちらの湯島聖堂と、前回紹介したニコライ堂の2つの聖堂を結ぶことから『聖橋(ひじりばし)』という名がついたそう。聖堂をつなぐ橋、何だか素敵な響きですね。
アクセスと営業情報
JR中央・総武線の「御茶ノ水駅」より徒歩2分、東京メトロ千代田線の「新御茶ノ水駅」より徒歩2分、東京メトロ丸の内線の「御茶ノ水駅」より徒歩1分。
公開時間 | 9:30~17:00 ※冬季は16:00まで |
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閉館日 | 8/13~17, 12/29~31 ※大成殿は土日祝 |
料金 | 無料 ※大成殿は200円 |
公式サイト | http://www.seido.or.jp/index.html |
※掲載の情報は2023年7月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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