明治擬洋風建築の傑作『山形市立郷土館(旧済生館本館)』(山形市)

山形県

明治時代に建設された西洋風の建築。かつては病院であり、現在は郷土館という資料館になっています。レトロで味わい深い建築と、そこに展示された医学資料が見どころです。

訪問日:2024/5/2(木) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

お城に建つ洋風建築

山形城跡を整備した霞城公園。その一角に、木々に包まれるようにそびえ立つレトロな建築物があります。

こちらは山形市立郷土館。1878年に竣工した旧済生館病院本館を利用した資料館です。

旧済生館病院は、明治時代に山形市を県庁所在地に相応しい都市へと近代化を推し進めた「土木県令」こと三島通庸(みしま みちつね)によって建設されます。この本館には、診療所の他に、医学校も併設されており、お雇い外国人のオーストリア人医師・ローレツを教師として山形の医学の中心としての役割を担います。

その後、医学校は廃止になり山形市立病院へ。新しくコンクリート造りの近代建築に移り変わります。老朽化とともに存続が問題となったこの本館は「廃棄」という決定がなされますが、シンボルであったこの建築の保存を望む声は多く、保存が検討されることに。

文部省による調査の結果、日本人の職人が西洋建築を模した「擬洋風建築」の傑作とし認められ、1966年に国の重要文化財に指定されました。これを機に、霞城公園内に移築され1971年に山形市郷土館として公開。現在に至ります。

円形に広がる展示室

入口は正面ではなく、建物の後ろ側。正面から見た塔のような姿から一転、裏から見ると印象が変わります。

入館は無料。館内は土足厳禁であるため、スリッパに履き替えます。

受付の先に広がるのは中庭。それを取り囲むように部屋が並んでいます。

もともと病院であったため、これらの部屋は待合室・外科診察室・眼科診療室・薬局など、医療に関わる部屋でした。現在は、各部屋が展示室となっています。

ずらりと並ぶ医学資料

郷土館の名の通り郷土資料の展示がありますが、その中でも多いのは医学資料。骨盤、気管支、頭蓋骨などの模型、ハサミやメスなどをはじめとした医療器具など、見方によってはちょっとだけコワイ雰囲気も。

歯科技工士が義歯を作る際に使用したという装置や、血液検査用の自動分析装置などの機械類も。専門的な道具であるため現在との比較は難しいですが、レトロ家電のような趣を感じます。

他にも、心電計・ペースメーカー・吸入器など、一般的に見かけることがあり得る器具もありました。

2階に広がるホール

正面から見えた塔の部分は、2階まで登ることができます。階段の先は一度水平な通路があり、また階段につながるという、ちょっとわくわくする仕上がり。

2階部分は円形の展示室。吊るされた電球がレトロな16角形のホールです。

正面上部に掲げられた扁額の済生館の書は、明治政府の重要人物・三条実美のもの。済生館という名前も、三条実美によって名付けられます。

この部屋は、かつては講堂としても利用されていました。入学式・卒業式が行われたり、ダンスパーティーが開催されたりすることもあったそうです。

ここから上は螺旋階段がつながっていますが、立入禁止。カラフルなステンドグラスがとってもキレイ。

館内には、三島通庸に関する展示もあります。冒頭でも書いた通り、旧済生館病院の設立に関与し「土木県令」とも呼ばれた人物。強固な気質と、強引な方針から「鬼県令」と呼ばれることもあったそう。写真からも、力強さが伝わってきます・・・!

アクセスと営業情報

JR山形駅西口から霞城公園南門経由で徒歩約15分。

開館時間 9:00~16:30
休館日 年末年始
料金 無料
公式サイト https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/shisetsu/bunkasports/1008032/1005895.html

※掲載の情報は2024年5月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

コメント

  1. […] […]

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