隠れ石川パビリオン『夜の地球 Earth at Night』(大阪・関西万博パビリオン)

大阪・関西万博

いったい何が展示されているのか、名前からは想像しづらいパビリオン。その内部には巨大な輪島塗の地球儀が鎮座しています。実質のところ石川県のパビリオンと呼んでも差し支えない石川色の濃さですが、いったい何のために造られたのでしょうか?

訪問日:2025/6/28(土) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

謎の漆黒パビリオン

長い行列を経てやっと入場できた大阪万博。最初に向かったパビリオンは夜の地球 Earth at Night

真っ黒な建物にカラフルな大漁旗がたっぷり掲げられた不思議な姿。「国名」も「企業名」も冠していないパビリオン、いったい何を展示しているのでしょうか。

なお、ここは予約不要で基本的に並ぶことなく入場できるパビリオン。訪問した日はコモンズですら入場20分待ちという大混雑日でしたが、ここはわずか3分待ちで済みました。滞在時間も10分程度で見られる規模なので、ちょっとした時間調整にもおすすめです。

輪島塗の大型作品

館内を奥に進むと見えてくるのは、シックな輝きを放つ真っ黒な地球儀。こちらがパビリオン名にもなっている「夜の地球 Earth at Night」です。

直径1メートルにも及ぶ大型地球儀で、輪島塗の作品。輪島市の依頼を受けた「輪島塗技術保存会」が5年がかりで制作したものであるそう。

椀木地・曲物木地・指物木地・朴木地・髹漆・呂色・蒔絵・沈金の8部門からなる技術者たちが、それぞれのテクニックを存分に発揮して完成させました。館内では、そんな制作過程の動画も見ることができます。

各都市の夜の姿

その名の通り夜の地球であるため、描かれているのは夜景が灯った姿。人が多く暮らしている大都市は明るく、それ以外は暗く表現されています。北朝鮮は国土のほとんどが真っ暗というのも興味深い仕上がり。

地球儀のまわりには、輪島塗で制作されたロンドン・北京・ニューヨーク・東京の夜景図が展示されています。光り輝く世界の大都市は、飛行機から見る景色を思い出します。

文字通りの「漆黒」と、上品な輝きを見せる「沈金」。輪島塗と夜景って相性が良すぎますせんか?

伝統的工芸品

夜の地球儀を抜けると、伝統的工芸品が紹介されたゾーン。南部鉄器、箱根寄木細工、樺細工が展示されています。職人のワザが詰まった作品は、小ぶりながらも見応え抜群。

左から「東京銀器」、「江戸切子」、「尾張七宝」。東京銀器って初めて耳にしたのですが、江戸時代中期頃より職人によって作られており、当時は町人の間でも広く親しまれていたそう。

石川の伝統工芸・九谷焼も展示されています。色鮮やかな色彩が特徴の焼物、緑・黄色・茶色とポスカのようなくっきりした発色が目を惹きます。

実は石川パビリオン

いったいどんなパビリオンかと思っていたのですが、いざ入ってみると輪島塗や九谷焼など、石川県の色が強いパビリオン。実はここ、もともとはイランパビリオンを予定していた場所であるそう。情勢によって参加を取りやめたイランに代わり、それを補うために企画されたのが今回の展示なのです。

館内では、自然災害の被災地への思いが込められたサザンオールスターズの楽曲「桜、ひらり」がエンドレスで流れており、能登半島地震の復興推進を感じさせます。メイン展示の「夜の地球 Earth at Night」、てっきり万博のために造られたのかなと思いきや、こちらの完成は2022年。石川県輪島漆芸美術館が所蔵していた作品であり、2024年に発生した能登半島地震による震災を免れた「復興のシンボル」 としてここに展示されているのです。

建物を取り巻く大漁旗は石川県漁協輪島支所のもの。もう石川パビリオンと呼んでも差し支えない施設でした。

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