山の中で木々に包まれた石積みの遺跡。ピラミッドのような姿や、側面に空いた穴など、独特な形状が魅力的な石造物です。こんな山の中でいったいどのような機能を持っていたのでしょうか。
山頂に残る遺跡
岡山の遺跡めぐり、最後の目的地は熊山遺跡。この遺跡があるのは、標高508.6mの熊山山頂。市街地からは遠く離れた山の中ですが、車道があるため車で近くまで進むことができます。
北側と南側、どちらからも向かうことができますが、今回は山陽自動車道を利用したので北側からアクセス。
山道を6kmほど進んで行きますが、道幅は狭くすれ違いは困難。待避場もほとんどないため、非常に神経を使う道です。
細い道を抜けると、広い駐車場に到着しました!大きな案内板も設置されています。ここからは熊山遺跡までは500m程とのことです。
山道ではありますが、砂利が敷かれておりほぼ平坦。歩きやすく普段着でも全然問題なさそうな道のりです。
熊山神社と猿田彦神社
駐車場から5分で熊山神社の鳥居が見えてきます。
登った先にある社殿。かつては「帝釈山霊山寺」というお寺でしたが、明治時代の神仏分離にともない閉山。現在は大国主命を祀る神社となっています。
注連縄のかかる立派な杉の木が2本。樹高38m、樹齢はなんと1,000年とのこと。苔むした姿に風格を感じます。
進んだ先に鎮座するのは猿田彦神社。小さな木造の社殿ですが、しっかりと瓦葺きされております。
こちらは鐘楼跡か観音堂跡。先ほど挙げた帝釈山霊山寺の伽藍跡地ということでしょうか。現在は石の五輪塔がずらりと並んでいました。
ピラミッド型の遺跡
木々が開けたスペースに突然現れる熊山遺跡。寄り道しながらも駐車場から10~15分ほどで来ることができました。
石積みのピラミッド状の姿は、まさに遺跡といった佇まい。加工されていない石を積み上げた野面積みスタイルですが、バランス良く仕上げられています。
この石造物が造られている場所は大きな岩が広がっており、平ではありません。先ほどの猿田彦神社があった場所の方がよっぽど適しているように感じますが、この場所でないといけない理由があったのでしょうか。
何のための石造物?
この遺跡はいったい何の遺跡なのでしょうか?古代の祭壇のような雰囲気がありますが、実は奈良時代前期に建造されたと考えられる仏教遺跡であるそう。
現代の仏教寺院においてこのような形状の建造物はあまり見かけませんが、奈良県の「頭塔(ずとう)」や大阪府の「土塔(どとう)」のように、ピラミッド型の「塔」は存在しています。インドにおいて塔はもともとこのような形状でしたが、仏教が中国に渡った際に中国建築と融合して五重塔のような「多層塔」に変化したという説もあります。
側面に空いた穴も、仏像を置く場所であったのかもしれません。また、仏塔の中心部には深さ2mほどの縦穴石室が設けられており、三彩釉の小壺と皮の巻物が入った「陶製筒型容器」が見つかったそうです。現在は、奈良県天理市の天理大学付属天理参考館で展示されているとのこと。
なぜこんな山奥に、と思いますが、これもおそらく帝釈山霊山寺の伽藍の一部であったのではないでしょうか。平坦ではないこの地を選んだのも、他の場所には既に諸堂が建てられていたのかもしれません。
見晴らしの良い展望台
遺跡のすぐそばにはトイレ、そして管理棟らしき建物が一軒建っています。その先にあるのが展望台。横たわる吉井川、さらにその先に広がる岡山市内まで広く見渡すことができます。
展望台には「岡山城を探せ」とのミッションが!
岡山城は「烏城」とも呼ばれる真っ黒な城郭。川沿いに建っていることも以前訪問した際に確認済み。これはすぐ見つけられるはず。そう思ったのですが、全然見つけられませんでした。
そんなわけで、遺跡散策はおしまい。駐車場からの往復含む所要時間は40分ほどでした。


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