名古屋を代表するアートミュージアム。「エコール・ド・パリ」「メキシコルネサンス」「現代美術」「郷土の美術」という4つの軸で作品を収蔵しています。黒川紀章による建築や屋外に並ぶ作品も見逃せません。
個性的な美術館建築
1988年に中区にオープンした名古屋市美術館。名古屋市科学館のある白川公園内に位置しています。
この美術館の建物は、見る角度によって大きく印象が変わります。入口から見ると、アプローチグリッドと呼ばれる枠組みが連なる姿。赤いハイヒールのような作品《ファブニール・ドラゴンⅡ》by アレクサンダー・コールダーが、来館者を出迎えています
西側は真っ直ぐな壁ですが、菱形の窓が突き出しておりなかなかのインパクト。
南側にまわると、真っ白なお城のような姿に。
設計を担当したのは黒川紀章。大阪府吹田市にある「国立民族学博物館」や「広島市現代美術館」、「福井県立恐竜博物館」など多数のミュージアムを手掛ける世界的な建築家です。2022年に解体された「中銀カプセルタワービル」は、大きな話題になりました。
設計デザインは、随所に日本らしい色彩や伝統的手法が取り入れられているそう。さきほどのグリッドの一部は、鳥居のような姿になっているポイントもあります。
建築を彩る屋外作品
美術館のまわりには多数の彫刻作品が展示されており、館内に入らずともアート鑑賞を楽しむことができます。
木々に溶け込むカラフルなボックスは《風のまつり》by 新宮晋。風を受けるとゆっくりと回転する、動きのある作品です。名古屋駅に設置されていたものを移動したそうです。
意外と見落としてしまうのが《接近Ⅴ》by アントニー・ゴームリー。秋だったので、落ち葉がたまってきています。
コンクリートプレートに記されたフットマーク、こちらは《点音》by 鈴木昭男。ここに立ち、周りの音を聴くという体感型のアート作品。耳を澄ませると、落ち葉が風に舞う音と鳥の声、人の話し声、遠くに聴こえる車の音・・・。これらが建物に反響して爽やかなハーモニーを奏でます。
地下一階部分の広場にある、《智者の頭》《黒い立像》という2つの作品は、ポーランドの彫刻家アバカノヴィッチ・マグダレーナによるもの。人型の作品は首のない姿ですが、後ろは空洞となっています。背の高い人なら、彫刻をまとった姿になることもできそうです。
広々としたエントランス
外観はそれほど大きく見えませんが、館内は3フロアにわかれており広々としております。地下1階が常設展示室、1階がショップと総合案内、2階が企画展示室となっていました。
常設展示室の入口にたたずむのは《ハンマリングマン》by ジョナサン・ボロフスキー。黒いシルエット型のヒトガタが、歯車の音を鳴らして動き続けます。どこか職人のような姿は、靴屋のイメージで作られたそうです。
ここで上を見上げると、宙づりの人が!!!こちらも同じくジョナサン・ボロフスキーによる《フライングマン》。
この人間は空を飛んでいるのでしょうか。それともこのまま落下してしまうのでしょうか。
4つのテーマのコレクション
さて、ここからが展示室!なのですが、写真撮影禁止でした。ということで、さらっと展示内容のご紹介を。この美術館のコレクションは「①エコール・ド・パリ」「②メキシコ・ルネサンス」「③現代の美術」「④郷土の美術」という4つの軸があります。
「エコール・ド・パリ(パリの学校)」というのは、1900年頃から1940年頃にかけてパリで活動していた画家たちの総称。世界中から集まった画家たちは、モンマルトルやモンパルナスの共同アトリエで創作活動を行い、多くの作品を世に出していました。モディリアーニ、シャガール、藤田嗣治など、「パリ派」とも呼ばれる画家の作品が多く展示されています
特に有名な作品は、入場チケットにもなっている《おさげ髪の少女》by アメデオ・モディリアーニ。まっすぐこちらを見つめる少女の表情はどこか虚ろ気。人物の後ろの背景は斜めに描かれており、もしかしたら正面からではなく斜めから見ることを想定しているのではという気になってきました。
メキシコで活躍した郷土出身の画家・北川民次との関連から、革命に揺れる20世紀前半のメキシコの近代美術メキシコ・ルネサンスも収集しています。
こちらの《プロレタリアの団結》by ディエゴ・リベラは、多数の人物が1枚に描かれた作品。遠近法を崩しているためサイズ感はばらばらですが、強い意志を感じる絵画です。
《メキシコ風景》by ホセ・クレメンテ・オロスコは、不思議な植物のまわりに女性が3人集まる様子。くっきりとしたトーンながらも幻想を感じる作品です。
このオロスコとシケイロス、そしてリベラを加えて三大巨匠と呼ばれているそうです。
4つのテーマがそれぞれ全く違うテイストであるため、全く飽きることなくたっぷりと楽しむことができました。今回はコレクション展のみを見学しましたが、様々な特別展も開催しています。公式サイトにてスケジュールを確認してからの訪問がおすすめです。
アクセスと営業情報
地下鉄東山線・鶴舞線「伏見」下車、5番出口から南へ徒歩8分
地下鉄鶴舞線「大須観音」下車、2番出口から北へ徒歩7分
地下鉄名城線「矢場町」下車、4番出口から西へ徒歩10分
開館時間 | 9:30~17:00 |
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休館日 | 月曜、年末年始 ※展示替のため休館期間あり |
料金 | 常設展300円 |
公式サイト | https://art-museum.city.nagoya.jp/ |
※掲載の情報は2024年11月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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