鑑真上陸の地・秋目を見渡すロケーション『鑑真記念館』(南さつま市)

鹿児島県

鑑真といえば奈良時代に日本に来日した唐の僧侶。多くの失敗を経て命がけで渡日した鑑真の目的はいったい何だったのでしょうか。そして、なぜ鹿児島南部のこの地に記念館があるのでしょうか。

訪問日:2023/11/7(火) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

秋目に立つミュージアム

枕崎の中心部から車で約40分のところに、薩摩半島の南端である坊津(ぼうのつ)の秋目(あきめ)と呼ばれる地区があります。

ここには鑑真記念館が建てられています。高台にあり、海を見渡す絶好のロケーション。天気が良い日に来れてラッキーな気分です。

鑑真といえば遥か昔に中国より日本に渡来した僧侶。戒律を日本に伝え、奈良に唐招提寺を開いたことなどで知られる僧侶です。なぜ鹿児島のはじっこであるこの地に鑑真記念館があるのでしょうか?

なぜ日本に来たのか

館内では、最初に13分間の映像を見ることができます。ものすごくわかりやすいので、とりあえず見ておくのがおすすめ。そして、展示室では坊津の紹介と鑑真のストーリーを示したパネル、そして奈良・平安時代に見られた手法である脱活乾漆造りでつくられた鑑真大和上坐像が鎮座しています。(※映像室および展示室は撮影禁止)

なぜ鑑真が日本へ来たのか、それには奈良時代の日本の仏教事情が大きく関わってきます。仏教の力で国を治めようとした聖武天皇は、日本各地に多数の寺院を建立。そのため、人々には重い税が課せられ、生活は厳しくなってしまいました。

一方、僧侶には税がかからないため、税を逃れることを目的に出家するものが続出。巷には仏教修行における規律である「戒律」を知らない無学無知な僧が増え、朝廷としても手が付けられない状態であったそう。

2人の遣唐使の使命

そんな乱れ切った国内の仏教を正すため、聖武天皇は遣唐使を派遣。栄叡(ようえい)普照(ふしょう)という僧が唐へ渡り、日本に来てくれる高僧を探します。

しかし、航海技術もまだ発達していない当時、日本へ渡るということは命がけ。危険を冒してまで海を渡ってくれる僧にはなかなか出会えません。

奔走を続ける栄叡と普照は、唐において第2の都市である揚州で、戒律の第一人者である鑑真と出会います。鑑真の弟子で誰か来てくれないかと頼みますが、手を上げるものは誰もいません。すると鑑真は、「誰もおらぬならば私が参ろう」と自らが名乗りをあげます。驚いた弟子たちも同行を決意。これにて栄叡と普照の目的は達成されたかに見えました。

苦難の連続

当時、唐では国外へ出ることが禁止されていました。そのため、船での参詣を装って出港しますが、密告にあい頓挫。渡航は失敗に終わります。栄叡と普照の2人は捕まってしあいますが、日本に帰るという条件で釈放されます。

2度目の渡航、鑑真は自らのお金で船を用意します。無事に唐を出港することができましたが、海上にて座礁してしまい失敗に終わります。

3度目の渡航もまた密告により失敗。鑑真の渡日に反対するものによって阻止されてしまいます。

4度目の渡航、今度はこれまでとは別の港から出港を計画しますが、またも弟子による密告があり出港が差し止めされてしまいます。

監視の目が緩むときを待ち、5度目の渡航へ。無事に港を出ることができましたが、道中で嵐に遭遇し14日間も漂流することに。海南島に漂着してしまい、日本には渡ることができませんでした。

この間、栄叡が病に倒れ、普照もまた鑑真一行と別れてしまいます。そして鑑真自身も、漂流の疲労から両目を失明してしまうのでした。

ついに日本へ

753年、日本からの遣唐使が鑑真のもとへ訪ねてきます。そこで鑑真は渡日を約束するも、唐の役人に阻止され、下船することに。頓挫したかに見えましたが、遣唐副使である大伴古麻呂(おおとも の こまろ)が独断で鑑真を自分の船へ。これにより、6度目にしてついに日本への上陸を果たします。

沖縄本島、屋久島と経由した船は、ついに九州に到着。その地こそが、この記念館の建つ坊津の秋目だったのです。

その後、鑑真一行は奈良の平城京に到着。日本の僧侶に戒律を伝えるとともに、建築、文化、医薬など様々な情報をもたらし、大きな影響を与えました。

秋目の入江

館内のテラスからは、秋目の入江が一望できます。1300年前、この入江に遣唐使船が到着、鑑真はこの地で2泊したそうです。

こちらは日本画家である東山魁夷が描いた秋目の入江。

鑑真が建立した唐招提寺には、教科書でもお馴染みの鑑真和上坐像が安置されています。この東山魁夷の作品は、その像の背後に安置されているそうです。

鑑真がこの秋目に来た際には失明しており、この景色を見ることはできませんでした。東山魁夷はそんな鑑真の目になるべく、この風景を描き上げたそうです。

唐招提寺の鑑真和上坐像は通常は非公開。1年に1度、6月に2日間ほどの一般公開が行われています。

アクセスと営業情報

枕崎駅より車で約40分。

開館時間 9:30~16:30
休館日 月曜
料金 210円
公式サイト https://kanko-minamisatsuma.jp/spot/7564/

※掲載の情報は2023年11月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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